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  [ネットモール運営会社の責任追及訴訟](2010/09/09)


≪チュッパチャプス・楽天市場事件≫


ネットオークションにおける取り込み詐欺の問題と並んで、よく問題となるのが、ネット上のショッピングモールのケースです。ここでも、出店しているお店に対して有効な責任追及ができない場合に、そのモール全体を設営している会社に対しての責任追及ができないかが争われる場合があります。


東京地裁平成22年08月31日判決判決PDF)は、「楽天市場」のケースで、それが問題となったケースでした。


【事案の概要】は、森永製菓が国内で販売する「チュッパチャプスキャンディ」で知られるスペインの企業の商標について、楽天市場に出店していたモールが不正に使用していました。そこで、商標権者は、各店舗に警告するとともに、「楽天市場」の運営主体(楽天)に対しても警告等を発しました。しかし、すぐに、雨後のたけのこのように類似の事案が発生する関係で、商標権者が、モールの運営主体である楽天に対して、実質的に商標を使用している、ないし、幇助しているとして損害賠償を請求したのが本件です。


なお、事案的には以上のものですが、本判決での説示は、ネットモール全体の管理者の責任を否定するに当たり、ネットオークションに関する名古屋判決と相通じるものがあります。それゆえ、ショッピングモールでの売買で取込詐欺等にあった場合についても、参考になるのではないかと思います。





≪ネットモール運営会社の責任の余地について≫


著作権におけるいわゆるカラオケ法理と同様の考え方で、商標の使用についても責任を負わせることができないか、という形で争われたようです。

この点、事実認定のレベルで、仮に、そのような法理を前提としても、要件を充足しないことが下記のとおり認定され、それにより、楽天(運営者)の責任は否定されています。


【判決文】


 前記前提事実によれば,@被告が楽天市場において運営するシステム(RMS)には,出店者が出店ページに掲載する商品の情報がすべて登録・保存されているが,個別の商品の登録は,被告のシステム上,出店者の入力手続によってのみ行われ,出店者は,事前に被告の承認を得ることなく,自己の出店ページに商品の登録を行うことができ,また,実際上も,被告は,その登録前に,商品の内容の審査を行っていないこと,A出店ページに登録される商品の仕入れは,出店者によって行われ,被告は関与しておらず,また,商品の販売価格その他の販売条件は,出店者が決定し,被告は,これを決定する権限を有していないこと,B顧客の商品の購入の申込みを承諾して売買契約を成立させるか否かの判断は,当該商品の出店者が行い,被告は,一切関与しないこと,C売買契約成立後の商品の発送,代金の支払等の手続は,顧客と出店者との間で直接行われること,D被告は,出店者から,販売された商品の代金の分配を受けていないこと,Eもっとも,被告は,出店者から,基本出店料(定額)及びシステム利用料(売上げに対する従量制)の支払を受けるが,これらは商品の代金の一部ではなく,また,システム利用料は売上高の2ないし4%程度であること(別表参照)に照らすと,商品の販売により,被告が出店者と同等の利益を受けているということもできないこと,F顧客が楽天市場の各店舗で商品の注文手続を行った場合,被告のシステムから顧客宛てに「注文内容確認メール」が自動的に送信され,これと同時に,同内容の「注文内容確認メール」が当該店舗の出店者にも自動的に送信されるが,これらの送信は,機械的に自動的に行われているものであり,被告の意思決定や判断が介在しているものとはいえないこと,G被告の出店者に対するRMSの機能,ポイントシステム,アドバイス,コンサルティング等の提供等は,出店者の個別の売買契約の成否に直接影響を及ぼすものとはいえないこと,以上の@ないしGに照らすならば,実質的にみても,本件各商品の販売は,本件各出店者が,被告とは別個の独立の主体として行うものであることは明らかであり,本件各商品の販売の過程において,被告が本件各出店者を手足として利用するような支配関係は勿論のこと,これに匹敵するような強度の管理関係が存するものと認めることはできない。

 また,本件各商品の販売による損益はすべて本件各出店者に帰属するものといえるから,被告の計算において,本件各商品の販売が行われているものと認めることもできない。さらに,上記@ないしGに照らすならば,本件各商品の販売について,被告が本件各出店者とが同等の立場で関与し,利益を上げているものと認めることもできない。もっとも,本件各出店者と被告との間には,被告は,本件各出店者からその売上げに応じたシステム利用料を得ていることから,本件各出店者における売上げが増加すれば,システム利用料等による被告の収入が増加するという関係があるが,このことから直ちに被告が本件各商品の販売の主体として直接的利益を得ているものと評価することはできない。

 以上によれば,被告が本件各商品の販売(譲渡)の主体あるいは共同主体の一人であるということはできないというべきである。

 したがって,原告の上記主張は採用することができない。












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