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  [サイバースペースにおける証拠収集とデジタル証拠の確保](2011/10/21)
  ● 「【著者】指宿 信/【出典】法時83巻7号84頁以下」


≪ハイテク犯罪の対策法≫

 法律雑誌に、2011年4月1日に第177回通常国会に提出されたハイテク犯罪対策の法案についての論説記事が掲載されていました。元々は2004年に批准したサイバー犯罪条約を受けての法案だったようですが、その後棚上げされていたものが、今般、急遽法案化が目指されているとのことです。

 刑事訴訟法をひと通り勉強してからでないと難しい内容かもしれませんが、法案の解説記事としては分かりやすいと思います。また、法案そのものは刑事事件に関するものですので、ネットにおける迷惑行為への民事的な解決手段としては直接関連しませんが、ネットがらみということで紹介しておきます。

 【論文の構成】

   はじめに
   1 法案の背景
   2 記録媒体の差押え
   3 記録命令付き差押え
   4 リモート・アクセス
   5 協力要請
   6 保全要請
   7 電磁的記録の没収
   おわりに



≪リモート・アクセスによる差押え≫

 個人的に目新しく感じたのは、リモートアクセスによる差押えです。被疑者がクラウドコンピューティングなどを利用してデータをネットワーク上に隠しているような場合、例えば、捜索差押令状の対象がデスクのノートパソコンであっても、そのネットワーク上のデータについても捜索・差押えが可能になる、という類の話です。

 ここで、リモートアクセスの対象となるコンピュータを特定する上での要件は、(1)差押対象コンピュータとの「接続性」、(2)差押対象となったコンピュータにおいてデータを作成・変更・消去しているという「関係性」、そして、(3)それらのデータを保管していると認められる「使用の蓋然性」が列挙されているそうです。


 なお、電磁的記録の没収というのは、今般の改正案ではデータのコピーをもって差押とみなす(擬制する)というのを基軸としており、その結果、コピー元となったデータがそのままもとのコンピュータ上に残存することになりますので、その不適当な元データ(ウイルスやハッキングツールなど)を残すことが妥当でない場合に、消去してしまうことをいうようです。



【資料・掲記論文88頁】


 これまでの捜索押収にあたっては、被疑者がなんらかのリモート・サクセス手段によってデータを別のコンピュータに保存していた場合、その別地に所在するコンピュータに対する令状を別に取得しなければ合法的にデータを取得することはできなかった。この場合のアクセス手段とは、メールサーバ等への転送、ファイル共有やデータ・ストレージ・サービスを使ったデータ転送などのインターネット通信が想定される。

 となると、物理空間においてはまったく別の場所にあるサーバやディスクスペースであるにもかかわらず、サイバースペース上では捜索押収の場所的概念に含まれてもよいということになる。だとすると、刑訴法219条に定める令状記載事項である「捜索すべき場所」につき、場所的範囲の例外を置くこととなり、また、令状発布段階で「場所を特定」する同条の要請が満たされない場合でも適法とされることとなろう。


 では、リモート・アクセスの場所的範囲はサイバースペース上なら無制限と考えてもよいか。条約においては、自国内の領域にのみかかる差押えが可能と解されているようだが(条約解説第192項参照)、ネット上ではそうした区別はたしかに意味を有しない。すると条文上の制約がないため国外サーバからデータを取得する行為に司法共助が必要とされないのか、問題となってこよう。

 条約締結当時には普及していなかったが、こんにちではデータ・ストレージ・サービスやメールサーバについて特定のマシンに依存することなくクラウド・コンピューティング技術を用いているケースも多く、データの保存先が国内ではないことが少なくない。同意承諾のない越境的な捜索については条約32条でも言及はされていないため、条約の補訂作業をおこなうEU作業部会では、リモート・アクセスとクラウド技術の衝突の頻度が高いとの認識に基づき、越境的捜索について条約の追加を含めた何らかの調整措置の必要性が既に議論されている。2011年は条約10周年を迎えるため、域外/越境的捜索を許容するための法的枠組みが新たに加わる可能性もある。


 遠隔コンピュータとの接続が判明したとしても、そうしたコンピュータにはアクセス制御がかけられているのが通常であり、対象者の協力が得られない限りリモート・アクセスによりデータを取得することが困難な場合も想定される。そうした事態にたいしょするためにも、次に見る「協力要請」の導入が図れたものと思われる。


 なお、現行法では被疑者を逮捕する場合には無令状で逮捕の現場での捜索・差押えが認められているが(刑訴法220条1項2号)、今回の改正に当たってリモート・アクセスを許容する99条2項の準用が定められなかったため(同条の準用を扱う222条1項の条文案には99条1項だけが明示され2項は除外されている)、逮捕の現場での遠隔接続コンピュータが見つかった場合に取るべき措置については本法案では示されなかった。緊急的な措置を認めるという見解もあるが、証拠の毀損滅失を防止する範囲に限定されると考えるべきであろう。




(※ ネット閲覧の便宜の為、適度に、改行を挿入した。)









 ■資料 









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