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Lawschool 趣味の法律セミナー
[発信者情報開示請求の実際:裁判外の開示請求編](2009/10/05)
● 「プロバイダの任意開示は、まず、期待できない」
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≪現実は、テキストのように甘くはない≫
ネットで中傷や著作権侵害があったら、IPアドレスとタイムスタンプを手がかりに、プロバイダーに対して、発信者情報の開示請求を行い、それによって発信者の特定をしていく・・・、というのが教科書的な解説です。ところが、現実には、そうは上手く進みません。
今回の講義は、実際に、発信者情報の開示請求訴訟をする上で、具体的にどのように作業を進めると良いかについてのポイント整理です。
なお、本講義は、自ら管理している掲示板やブログのコメントに迷惑投稿が為される場合など、発信者のIPアドレスを保有しており、プロバイダーに対してその発信者の情報を開示請求するケースを、主に念頭においております。
≪プロバイダーの任意の開示は期待できない≫
まず、プロバイダーは、発信者情報について一切教えてくれないと思っていた方が良いです。
プロバイダーは一切の責任を負いたくなく、かつ、発信者情報の開示業務に費用もかけたくはないので、裁判外での開示請求に対しては、【一律不開示との対応】で処理していると考えて良いと思います(それならば、何らの専門知識も必要とせず、一般のクレーム対応のバイトを雇うだけで済みますので)。
従いまして、おそらくは、発信者情報の開示請求をしようと思い立った場合、まずは、メールやプロバイダーのHPにある苦情受付フォームから問い合わせると思いますが、その問い合わせ、及び、それに引き続く、書面での発信者情報の開示請求は、あくまでも、裁判において発信者情報の開示請求をする為の事前の手続的準備作業に過ぎない、と割り切って処理してください。そうでないと、返ってくる返答のネガティブなものに一々腹立たなければならなくなりますので。
もっとも、裁判外での開示請求でも、開示される情報というものはあります。
一つは、プロバイダーによるのですが、プロバイダー独自の基準で、発信者情報開示請求に基づく開示とは別に、苦情の申立があった場合、経由プロバイダーの情報を開示するとのポリシーを掲げているところがあります。その場合には、当該プロバイダーと経由プロバイダーとの契約で処理された結果、事務的に、経由プロバイダーの情報が開示されるようです。
これは、あくまでも、プロバイダーの利害関係人に対する、発信者情報開示請求権とは無関係の【サービス開示】です(このあたりの開示の根拠については、メールで細かく聞いて、確認しました)。そのようなプロバイダーもありますので、メールなどの問い合わせも、全くの無駄であるというわけではありません。
しかし、他方で、同じプロバイダーでしたが、契約での処理に対応していない経由プロバイダーの情報については、メールでの問い合わせでは教えてくれませんでした。そこで、更に、書面での発信者情報の開示請求をしてみたところ、これまた、経由プロバイダーの情報でありながら、不開示との判断が返ってきました。従いまして、あくまでも、法に基づく発信者情報の開示請求とは別の根拠でのプロバイダーによる任意開示(【サービス開示】)は、「その可能性がある」という程度で理解しておくのが無難です。
これに対して、メールでの問い合わせ段階では否定的な回答をしている場合でも、裁判外での発信者情報の開示請求に応じるプロバイダーも、稀にあるようです。その真意は量りかねますが、経由プロバイダーの情報の場合、賠償責任というものがあまり考えられない関係上、開示請求者からの訴訟リスクを避ける為の【投げやり開示】とも言うべき対応を取っているのかもしれません。
(「プロバイダの不思議な主張」へ、続く)
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