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  定額郵便貯金は、遺産分割の対象か?
  金銭債権でも、分割されない例外事例 (最判平成22年10月08日)



≪銀行預金などの金銭債権の取り扱いについて、原則≫


相続において、銀行預金などの金銭債権については、「相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」ので、遺産分割の対象とならないという原則(最判昭和29年04月08日)があります。

これは、相続できないと言っているのではなく、遺産分割手続きを経ることなく、
当然に相続しているので、各相続人が個別に銀行等に対して権利行使できるといことを意味しています(いわゆる「当然相続説」)。




≪定額郵便貯金の例外≫

ところが、近時、その例外が現れました。それが、本件の定額郵便貯金です。

最判平成22年10月08日(平成21(受)565)において、最高裁は、「同法は同債権の分割を許容するものではなく,同債権は,その預金者が死亡したからといって,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである」と述べて、他の金銭債権の場合との違いを表明しました。

簡単に言えば、定額郵便貯金は、定額・画一化による作業効率を目的とした規律が
法律上定められていることから、分割されることを予定していない、それゆえに、相続の場合だからと言ってこれと別に解することはできない、というものです。

その結果、定額郵便貯金に限っては、一般の相続財産と同様に、遺産分割の対象となります。


なお、この裁判自体は、「『定額郵便貯金が遺産に属するか』を確認する裁判を提起することができるのか」が争われた裁判です。





【参考サイト】
 〆 最判平成22年10月08日(平成21(受)565)   【判決PDF
 〆 最判昭和29年04月08日(昭和27(オ)1119)   【判決PDF


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