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離婚裁判、本に書かれていない厄介なトラブル
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≪こんな厄介なトラブルが!≫
話し合いでの離婚がまとまらない場合、大きく2つステップを踏んで、離婚を目指すことになります。それが、@ 離婚調停の申立てであり、それを必ず経て、ついで至るのが、A
離婚裁判の訴えです。
さて、具体的な手続きや、法律関係などの知識については、本屋さんに購入できる離婚裁判ものの本で簡単に勉強することができますので、今回は、あまり本などに載っていない、離婚につきもののトラブルについて、2点お話しようと思います。
(A) トラブル1 「弁護士が、全然、連絡をくれない…、動いてくれない…。」
ビックリするようなタイトルですが、意外に多いのが、このトラブルです。
一般に、離婚に関しては調停段階では話し合いという意識が強いことから、弁護士をつけないで挑むことが多く、その後、調停が不調になり、いざ、裁判だという段階になって、はじめて、法テラスなどから紹介を受けて、弁護士を選任するケースが、よくあります。この場合、依頼人の側では、これまで独力で頑張ってきたぐらいの人ですから、意欲的に取り組んで欲しいとの願いが強く、また、訴訟になったから、やむなく弁護士に頼むことにしたという側面も強いと思います。
ところが、弁護士に離婚裁判を委任したものの、ひと月たっても、ふた月たっても、梨のつぶてで、裁判の経過はどうなっているのか、あるいは、そもそも訴えを提起してくれたのかどうかさえ不明である、というケースがあります。
当然、依頼者は不満に感じますが、しかし、このとき、依頼者には、その不満が妥当なものであるかを測るすべがありません。「弁護士は忙しい」という先入観がありますし、また、裁判手続きに要する期間というものについて予備知識を持ち合わせていないからです。
そこで、そのような場合、考える材料として次の点を指摘しておくことにします。
@ 離婚裁判における訴訟の作成は、依頼者から事情を聴取すれば、数時間もあればできる作業です。もちろん、他に急を要する案件など、その他の案件などとの兼ね合いもありますので、「即日にできなければ怠慢だ」という趣旨までを言うものではありません。
この点、参考になるのが、印紙代についての特別の扱いです。即ち、離婚調停が不調に終わった後、2週間以内に離婚訴訟の提起があった場合、調停の為に支払った印紙代2000円は、離婚訴訟に必要な印紙代の為に再利用することができます。つまり、2週間もあれば、平均的な弁護士であれば、離婚訴訟の提起にまで漕ぎ着けることができると暗にほのめかしているものと考えてよいのではないでしょうか。
A 依頼人への報告は、委任という法律行為の基本的な要素であるということ。
世の中の弁護士の一般がどうかはともかくとして、少なくとも、訴状や準備書面等について依頼人にこれでよいかとの確認を取ったり、期日においてどのような陳述をしたかとの報告をしたり、あるいは、和解案について事前の承諾を求めたり、と一般人の感覚では常識的な対応を実践している弁護士も存在しているということ。つまり、それと比べれば、「報告をしてこない弁護士というのは、あまり良心的ではない」といえるのではないでしょうか。
とりあえずは、報告してくれるよう求め、それでもしてくれない場合は、所属の弁護士会の苦情窓口に相談してみるのとよいと思います。
B 訴えの提起から、裁判が始まるまでは、大体、ひと月半ぐらいかかること。従って、正式の依頼から二ヶ月というのは、ひとつの目安になるのではないでしょうか。
C 弁護士の解任は、いつでも可能。理由は不要。着手金については、原則、返ってこない。ただし、弁護士の怠慢によるものとの事情があるのであれば、弁護士会に相談しつつ、任意に交渉してみる価値はあります。
(B) トラブル2 「相手の主張が嘘八百だ!」
ほぼすべてのと言っても過言でないのが、このトラブルです。
これについては、特に、本人訴訟で望んだ場合、直面する問題です。ある体験談などでは、「訴状ってひどいことが書いてあるのです。離婚調停をしたからといっても、これが一緒に生活していたあの人か・・・、という感じです。この訴状が本当だったら、私はどんな人間なんだ・・・、と思い、もう一度、読み返す気力さえ失せます。」と嘆くものがありましたが、それぐらいに、離婚訴訟では、弁護士が作文していると疑いたくなるような非難の嵐に遭遇することが、ままあります。
これについては避けようがありませんが、しかし、むしろ大事なのは、それに対する心構えです。
その体験談にも書かれていましたが、「本当ことだけを話してください」との弁護士の言葉は、額面どおりに受け取ってはいけません。そして、そのことを、相手方さんと相手方の弁護士との間にも同様にあてはめてみてください。そうすれば、おのずと分かるのではないでしょうか。つまり、「弁護士が間に入ると、こういうものなんだ」と割り切ることが肝要で、いちいち真に受けないよう、心の準備をしておけば良いのです。
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調 停 |
裁 判 |
概 要 |
- 任意の話し合いでの解決が望めない場合、まず、裁判所に離婚調停を申し立てる。
- 裁判離婚と違い、話し合いさえまとまれば、諸条件について、多様な解決が可能。
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- 調停の後、あるいは、更に、審判を経た後、離婚の裁判という流れで訴える。
- 裁判である以上、離婚を認める・認めない、慰謝料をいくら認める、というような典型的な解決しか期待できない。
- 但し、訴訟の途中で、和解などを活用すれば、なお柔軟な解決の余地はある。
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実 費 |
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- 印紙代 1万3000円。
- 但し、慰謝料請求を合わせてする場合で、その金額が160万円を超える場合は、それに応じた印紙額となる。
- 財産分与をあわせて申し立てる場合、印紙代に、一律1200円が加算。
(※訴額には、算入しない)
- 切手代 6400円前後。
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必要なもの |
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- 調停が不成立になったことを示す資料。
(調停不成立証明書、または、調停調書の謄本)
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【参考サイト】
〆 離婚調停などに関する一般の解説について、最高裁HPの関連ページ
〆 離婚裁判などに関する一般の解説について、最高裁HPの関連ページ
【関連トピック】
◆「離婚、婚約トラブルの相談先、専門家の選び方」
◆「離婚裁判、弁護士に頼まなくても大丈夫?」
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◆「離婚、別居を考えているけれど・・・、準備すべきことは?」
◆「離婚、弁護士費用(報酬)は、どのぐらい?」
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§お勧め資料§
● 『要件事実マニュアル〈5〉
家事事件・人事訴訟・DV』
岡口 基一 (著)
(ぎょうせい 2010年7月)
要件事実とは聞きなれないタイトルの実務家向け専門書。実務上必要となる情報が凝縮されている本なので、本講義でもテキストに指定しています。
見た目はワケの分からない記述となっていますが、読み方さえ知れば、裁判を戦い抜く上での教本となってくれます。特に、実務上、何か手続の申立てをしようとすれば必要となる「申立ての趣旨」の記載例が網羅的に載っているのが、魅力的。
弁護士に頼らずに自分で裁判をやり抜けるには、結局、多様な「申立ての趣旨」の記載例を知る必要がありますので、ネット検索で方々を駆けずり回るよりは、信頼性のあるこの本を手元においておくのが、早道です。
● 『損しない傷つかない
離婚の本』
太田 宏美 監修
(永岡書店 2005年04月)
一般向け図書としての離婚マニュアル本。弁護士が監修。多色刷りと、ポイント毎の図表やチャートなどで、大変読みやすい作りとなっています。内容面でも、手続きについて類書よりも詳しく書かれており、重宝します。
本当に良くできたマニュアル本で、値段も廉価なので、離婚を考えたのなら是非手元におくべき一冊です。
● 『離婚のための準備と手続き』
鈴木 幸子 (監修)
(新星出版社 2007年2月)
一般向け図書としての離婚マニュアル本。弁護士が監修。3色刷りなので、レイアウト的にも分かりやすく、読みやすいテキストであると思います。監修が女性弁護士なので、女性向けに配慮しているような感じがします。値段的にもお手ごろなので、入門書としてお勧めします。
● 『離婚解決完全マニュアル』
馬場澤田法律事務所 (編集)
(中央経済社 2007年4月)
一般向け図書としての離婚マニュアル本。こちらの本は、普通の白黒のあっさりとしたレイアウトもあって、どこかカッチリとした印象を受け、弁護士が書いたものだな〜という感じがする本です。
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