■HOME  ■Lawschool  ■本人訴訟  ■ネット/バスター  ■セミナー  ■お問い合わせ  ■メール相談・業務依頼  





離婚・恋愛トラブル相談                                   目次へ戻る


  養育費の算定に、「子供手当て」は考慮されるのか?
  (広島高裁平成22年06月24日判決)



≪概要≫


未成熟子を有する夫婦の離婚事件において、いわゆる「子ども手当」を、子の養育費の算定にあたり、考慮すべきかどうかが争われた事案があります。

事案の概要としては、妻の方から夫へと離婚を求め、それと同時に、子の親権、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割の標準値についての判断をあわせて求めたようです。一審では、基本的に、妻側の要求がとおり、それに、夫の方から控訴をしていたのが、本件控訴審です。




≪子供手当てについての主張≫


判決文に簡潔にまとめられているところによりますと、次のとおり主張していたようです。

「本年4月1日から子ども手当が一人当たり毎月1万3000円支給されることになった。来年度からはこれが2万6000円に増額されるとのことである。したがって、この金額については、当然に養育費から控除されるべきである」と。




≪裁判所の判断≫


 広島高裁は、子供手当ては、養育費の算定において考慮すべきではない、と判断しました。


【判決文】

  平成22年度における子ども手当の支給に関する法律は,次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを
 支援するために,平成22年度における子ども手当の支給をする趣旨(1条)で制定された同年度限りの
 法律であり,政府は,平成23年度以降の子育て支援に係る全般的な施策の拡充について検討を加え,
 その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされていること(附則2条2項),その支給要件も,監護者
 である父又は母の所得に関する制限が設けられておらず(4条1項,2項),厚生労働省雇用均等・児童
 家庭局長の平成22年3月31日付け都道府県知事宛て通知(雇児発0331第17号)においても,子ども
 手当については,子育てを未来への投資として,次代を担う子どもの育ちを個人や家族のみの問題とする
 のではなく,社会全体で応援するという観点から実施するものであると説明されていることからすると,
 子ども手当の支給は,民法上の扶養義務に淵源を有する養育費の支払に影響を与えるものではないと
 解されるし,少なくとも,平成22年度限りの法律である同法による子ども手当について,これを継続的な
 養育費算定において考慮することは妥当でないというべきである。
  したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。

                                  (広島高裁平成22年06月24日判決 判決PDF



【関連トピック】

◆「離婚、婚約トラブルの相談先、専門家の選び方
◆「離婚裁判、弁護士に頼まなくても大丈夫?
◆「離婚裁判、本に書かれていない厄介なトラブル
◆「離婚、別居を考えているけれど・・・、準備すべきことは?
◆「離婚、弁護士費用(報酬)は、どのぐらい?


 

 拍手で応援
 お願いします!

                                             リスト一覧へ


  離婚のご相談、メール相談! 葵行政書士事務所


                                                 ページトップへ
                         


    







§お勧め資料§




● 『要件事実マニュアル〈5〉
   家事事件・人事訴訟・DV』
   岡口 基一 (著)
  (ぎょうせい 2010年7月)

要件事実とは聞きなれないタイトルの実務家向け専門書。実務上必要となる情報が凝縮されている本なので、本講義でもテキストに指定しています。

見た目はワケの分からない記述となっていますが、読み方さえ知れば、裁判を戦い抜く上での教本となってくれます。特に、実務上、何か手続の申立てをしようとすれば必要となる「申立ての趣旨」の記載例が網羅的に載っているのが、魅力的。

弁護士に頼らずに自分で裁判をやり抜けるには、結局、多様な「申立ての趣旨」の記載例を知る必要がありますので、ネット検索で方々を駆けずり回るよりは、信頼性のあるこの本を手元においておくのが、早道です。





● 『損しない傷つかない
   離婚の本』
   太田 宏美  監修
  (永岡書店 2005年04月)

一般向け図書としての離婚マニュアル本。弁護士が監修。多色刷りと、ポイント毎の図表やチャートなどで、大変読みやすい作りとなっています。内容面でも、手続きについて類書よりも詳しく書かれており、重宝します。

本当に良くできたマニュアル本で、値段も廉価なので、離婚を考えたのなら是非手元におくべき一冊です。





● 『離婚のための準備と手続き』
   鈴木 幸子  (監修)
  (新星出版社 2007年2月)

一般向け図書としての離婚マニュアル本。弁護士が監修。3色刷りなので、レイアウト的にも分かりやすく、読みやすいテキストであると思います。監修が女性弁護士なので、女性向けに配慮しているような感じがします。値段的にもお手ごろなので、入門書としてお勧めします。





● 『離婚解決完全マニュアル』
   馬場澤田法律事務所 (編集)
   (中央経済社 2007年4月)

一般向け図書としての離婚マニュアル本。こちらの本は、普通の白黒のあっさりとしたレイアウトもあって、どこかカッチリとした印象を受け、弁護士が書いたものだな〜という感じがする本です。