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離婚・恋愛トラブル相談                                   目次へ戻る


  〆第1回 「弁護士に頼らずに自分でやると決めたのなら」
   
一般図書・ネット検索と、専門書との共同作業を!


≪はじめに≫


離婚を弁護士抜きで独力でやりのけた方の体験話などを見聞きしていますと、分からないなりに、雛形やテンプレートをとりあえず利用して、当面の手続きをなんとかクリアーしている姿が垣間見えてきます。

単純に離婚原因のみを争うだけの裁判であれば、そこまでの苦労は感じないかもしれませんが、しかし、離婚に絡む法律用語でも、「調停」「審判」ならまだ序の口、少し横道にそれると、例えば、婚姻費用の分担を求めたりした場合、「控訴と抗告」「決定と判決」「本案と保全処分」とはどう違うの? などという疑問に行き着きます。もっとも、それらは、少し説明をしてもらえれば、「なんだ、大したことないんだ」となる話なのですが。

しかし、裁判所の職員や相手の弁護士などは、そういうことには気にかけてくれずに、当たり前のように使ってきます。その為、別のものなのに区別がつかない一般人は混乱してしまいます。もう少し親切に説明してもらえる機会さえあったのなら、もっと手続きを理解してそれらを活用していけたであろうに・・・。




≪まず、揃えて欲しいもの・・・、それは、一冊の専門書≫


まず、離婚を考えたのなら、とりあえず比較的大きな書店や図書館に出向いて、一般人向けの離婚マニュアル本を手に取ったのではないかと思います。この記事の読者ともなれば、それなりに一般図書やネット検索での学習を済ませた方であろうと予想されますが、大まかな流れをつかむ上でもそこから始めてください。

しかし、一般向けのマニュアル本の難点は、裁判所での手続きについては詳しく書かれていないことです。調停の申立書サンプルの掲載と、数ページの説明ぐらいが関の山です。これでは、なるほど、調停の申立てまではできるでしょうが、「では、その後は?」となってしまいます。また、ネットでも同様の傾向があります。


そこで、一般向け図書やネット検索は、大まかな手続きの存在を知るキッカケであると割り切って、具体的な手続きの利用方法については、一つ専門書を用意しておくのが良いでしょう。どうせ独力でやる以上、弁護士に相談した場合と同程度の情報を教えてもらえる参考書があった方が便利でしょう? 従って、専門書の目次代わりに一般向け図書やネット検索を利用し、両者の共同作業によって理解の促進を図りましょう。

では、専門書としては、何が良いでしょうか?

ずばり、サイドバーでも紹介している『女性の為の婚姻費用分担請求ガイド』が、記述の内容面と丁寧な解説においてお勧めです。但し、同書は電子書籍版しか存在しません。その為、本講義ではテキスト指定していませんが、法律の素人向けマニュアル本としては一押しです。


他方、書店にも並んでいる一般書籍からであれば、『要件事実マニュアル(5巻)』(岡口基一)がお勧めです。まったくの素人の場合、パラパラとめくっても一見何がなにやら分からないように感じるでしょうが、しかし、読み方さえ教われば、ものすごく使い勝手が良い本であることが分かってきます。

ここで、ちょっと、弁護士に相談した場合を想像してみてください。弁護士に相談したところで、弁護士の先生の説明は難解で、往々にして、私たち素人にとっては意味不明です。なら、それが本になっているぐらいで怯んでどうしますか! むしろ、遠慮せずに何度でも読み返せる分、本の方がお手軽です。




≪テキストの読み方・使い方≫


例えば、「婚姻費用に関する調停・審判事件」を例にとってみましょう。テキストの42ページ以下です。

最初に、「参考文献」が網羅されていますが、素人は無視してかまいません。次に、テキストにそってみていくと、審判の管轄や、主文・申立ての趣旨例というのがあり、その解説の後、「1 基礎知識」とあって、また解説があり、ついで、「2 婚姻費用分担額の具体的算定」とあって、その解説がつづいています。そして、他の単元でも、おおよそそのようなパターンで組まれています。

そこで、それらの項目や記載の意味を理解しておけば、本書の使い方が分かってきます。


◆ 【管轄】

まず、【管轄】いうのは、読んで字のごとく、その手続きをしたい場合、どこに申し立てればよいかを意味しています。今回の例であれば、「相手方の住所地」とありますから、配偶者さんの住所地を管轄している裁判所に申し立てればよいということが分かります。


◆ 【主文・申立ての趣旨例】

次に、【主文・申立ての趣旨例】という馴染みのない用語とともに、「相手方は、申立人に対し、○万円支払え。」といった、素っ気無い言い回しが記載されています。素人にとっては、そもそもこの記載の意味も目的もわからないので、「?」となりますが、これは、実務家にとっての本なので冒頭のこの位置にあるのです。

実は、裁判(訴訟や調停・審判)をする場合、「申立ての趣旨」を訴状などの申立書の初めの方に書くことになりますが、その場合のお決まりの言い回しこそが、この【主文・申立ての趣旨例】として書かれている文章なのです。ですから、そういうものだと理解してしまえば、当面は不要だというのが分かるのではないでしょうか? つまり、「実際に、申立書を書く段階まで飛ばし読みしておけばOK」という部分だと分かりますね。


◆ 【1 基礎知識】

次に、【1 基礎知識】のパートですが、ここは痒いところに手の届いた説明が書かれています。今回の例であれば、婚姻費用の請求をいつから求めることができるのかについて解説されていますね。「請求時」からの不払い分を遡って裁判で求めることができる、というような趣旨の説明が為されています。また、その「請求時」についても、「当該審判(又はそれに先立つ調停)申立時であるが、それ以前に請求していたことが立証されればその請求時である」と解説されています。

従って、もし、あなたが婚姻費用の分担の申立てを裁判所にしようと考えているものの、その手続きのやり方等についてこれからの学習が必要などの理由で、すぐに申し立てることができそうにないときは、内容証明郵便ででも通知しておけば、それによってその到達時点からの婚姻費用分をも請求できるわけですね。

このように、本書での基礎知識としては、実際に手続きをしてみようと思った段階に悩む事項の解説が書かれています。他方、手続きそのものの解説――、例えば、「当面の生活費を配偶者に払ってもらいたいけれど、その為にはどうしたら? ⇒(答え)婚姻費用の分担の調停・審判を利用すべし」とか、「婚姻費用の分担申立てとは、何? ⇒(答え)配偶者に生活費を支払ってもらう為の手続き」といったレベルでの解説は少ないです。

そこで、そういう疑問についての解説が豊富な一般図書やネット検索で調べ、そのうえで、本書を利用して、裁判所を実際に利用する為の知識を本書から入手するのが賢明だと思います。


◆ 【2 婚姻費用分担額の具体的算定】

最後に、【2 婚姻費用分担額の具体的算定】のパートですが、これも、読んで字のごとくですね。一般図書やネット検索でも色々と説明されているのが見つかりますが、本書の方が詳細で、信頼性もあります。




以上みてきましたが、それぞれのパーツの意味合いが分かってきたでしょうか? 繰り返しになりますが、本書は、「〜〜という問題を解決するには、どういう手続きがあるのか?」という疑問には役立ちませんが、一旦、手続きの存在を知って、「〜〜という手続きを利用したいけれど、どうしたらよいのか?」という疑問には大いに役立ちます。そして、一般図書やネット検索では、前者の問題については色々と情報が溢れていますが、しかし、後者の問題についての解説は少なく、まさに、そこの知識の独占は弁護士のもとにあると言っても過言ではありません。

従って、お金の使い道の選び方として、弁護士にお金をかけないのであれば、あるいは、弁護士に依頼するもののその仕事振りをモニタリングしたいという場合には、評価の物差しとなるべき知識を得るべく、本書を活用してみてはいかがでしょうか?

なお、本シリーズは、『要件事実マニュアル(5巻)』(岡口基一)をテキストとして、より分かりやすく砕いた説明をする形で進めていければ、と願うものです。





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婚姻費用分担請求の申立書の書き方、婚姻費用の額を算定する際の諸般の問題、例えば、住宅ローン、大学の学費、医療費など最近の裁判実務の扱いを解説。また、その記入例も紹介。

弁護士などの専門家に頼らずに独力でやってみる為のノウハウが色々と詰め込まれた一冊です。



§お勧め資料§




● 『要件事実マニュアル〈5〉
   家事事件・人事訴訟・DV』
   岡口 基一 (著)
  (ぎょうせい 2010年7月)

要件事実とは聞きなれないタイトルの実務家向け専門書。実務上必要となる情報が凝縮されている本なので、本講義でもテキストに指定しています。

見た目はワケの分からない記述となっていますが、読み方さえ知れば、裁判を戦い抜く上での教本となってくれます。特に、実務上、何か手続の申立てをしようとすれば必要となる「申立ての趣旨」の記載例が網羅的に載っているのが、魅力的。

弁護士に頼らずに自分で裁判をやり抜けるには、結局、多様な「申立ての趣旨」の記載例を知る必要がありますので、ネット検索で方々を駆けずり回るよりは、信頼性のあるこの本を手元においておくのが、早道です。





● 『損しない傷つかない
   離婚の本』
   太田 宏美  監修
  (永岡書店 2005年04月)

一般向け図書としての離婚マニュアル本。弁護士が監修。多色刷りと、ポイント毎の図表やチャートなどで、大変読みやすい作りとなっています。内容面でも、手続きについて類書よりも詳しく書かれており、重宝します。

本当に良くできたマニュアル本で、値段も廉価なので、離婚を考えたのなら是非手元におくべき一冊です。





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   鈴木 幸子  (監修)
  (新星出版社 2007年2月)

一般向け図書としての離婚マニュアル本。弁護士が監修。3色刷りなので、レイアウト的にも分かりやすく、読みやすいテキストであると思います。監修が女性弁護士なので、女性向けに配慮しているような感じがします。値段的にもお手ごろなので、入門書としてお勧めします。