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[【答弁書】 請求の趣旨・原因に対する答弁の記載方法]
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前回は、答弁書の形式的な記載部分について説明しました。
今回は、「請求の趣旨に対する答弁」と、「請求原因に対する答弁」です。これらは、訴状に書かれている項目に沿って記載していくのが原則となります。
≪請求の趣旨に対する答弁≫
「請求の趣旨」への答弁は、「請求を認める」(請求の認諾)か、「請求を棄却する」のどちらかになります。勿論、相手の請求が複数にわたっている場合には、それぞれについて別の答弁をすることは可能です。
形式的な話しですが、「請求を棄却するとの判決を求める」というように、「判決を求める」と修辞的につけます。
また、訴訟費用についての裁判も求めておきます。例えば、「訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求める」と。
なお、実際の対応の指針としてですが、一般的には、「請求を棄却する」との裁判を求め、和解勧試などで裁判所の見解をそれとなく聞かされて(いわゆる心証開示)、その後、最終的な決定をくだすのが普通ではないでしょうか。
≪請求原因に対する答弁≫
「請求の原因」に対する答弁は、基本的には、次の3つから選んで記載します。
「認める」、「否認する」、「不知」。この内、「不知」は、否認と推定されます。
訴訟法的には、「沈黙」もありますが、前後の文脈や全体の趣旨からして、文書での記載に「沈黙」は事実上ありえないので省かせてもらいました。
他方、「否認」に代えて、「争う」という書き方も好まれます。これについては、法律上の主張に対しては「争う」で、事実に関する主張に対しては「否認する」と書き分けるよう、と解説されているのも見かけます。
ただ、実務家は語感的に区別して使っているところが確かにありますので、プロでもない皆さんも感覚的に使い分ければ足りるでしょう。裁判官も、素人相手に、その程度の些細な間違いにいちいち目くじらを立てません。要は、相手の法律的な主張にしろ、事実に存否についての主張にしろ、アナタがの「否定している」ことが分かればよいのです。
さて、おおよその区別としては、
・ 「そんな事実はない」と反論する場合が、「否認」です。
・ 「そんな義務はない」と反論する場合が、「争う」です。
また、具体的な記載方法としては、例えば、
「請求原因 第1の1については、否認する」とか、
「請求原因 第2については認める。但し、XXXXXXXについては否認する」とか、
部分的に否認したり、認めたりもできます。
≪「不知」との答弁に、躊躇わない≫
「不知」との答弁については、無責任な回答のように思えるのか、初めて訴状を目の当たりにしたような人には、心理的な抵抗をもたれる方もおられるようです。
しかし、訴訟の場では、そのような意味合いはありません。実務的にも、多用されますので、率直に知らないならば「不知」と答弁すれば足ります。
≪スタイルは、原則、フリー≫
以上が、請求原因に対する答弁の基本ですが、上記のルールを律儀に全部守る必要は、実は、ありません。
当事者についての記載や、ほとんど争いのない部分については、「認める」との基本ルールに沿った回答をしつつ、争いのある部分については、その場で、具体的な反論を記載しても良いですし、あるいは、「後記の被告の主張で述べるとおりである」というように、まとめての反論をしても構いません。
要するに、原告の主張に対して、被告がどのような主張であるかが分かればよいのです。
ただ、裁判官にその主張が整理されているようにみせる上でも、不必要に一般ルールを逸脱しない、というように覚えておけば良いのではないでしょうか。
(記載例:答弁書サンプル)
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事件番号 平成XX年(ワ)第XXXXX号事件
原告 碇 烈蔵
被告 柳 流輔
答 弁 書
平成XX年XX月XX日
大阪地裁 第3民事部 御中
(送達場所)
〒123−4567
大阪府YYYYYYY
TEL 8901−2345
被告 柳 流輔
第1 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する
2 訴訟費用は原告の負担とする
との裁判を求める。
第2 請求の原因に対する答弁
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1 訴状第1項は、否認する。
同第2項は、不知。
・・・・・・・・・・・
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§お勧め資料§
● 『法務担当者のための
民事訴訟対応マニュアル』
田路 至弘 編著
(商事法務 2005年10月)
「答弁書」について、類書の中でしっかりとした記述があるのは、この本。
特に、74ページ以降で、「答弁書の記載事項」とあって、(1)「本案前の申立て・答弁」、(2)「請求の趣旨に対する答弁」、(3)「請求の原因に対する認否」、そして、(4)「被告の主張」と項目分けされて解説されており、コンパクトながら、(類書ではそれらの解説すらあまりないので)重宝します。
また、答弁書のサンプルもありますし、更には、「被告の対抗手段」「若干の理論的問題」としてまとめて解説されている項目も面白いです。
総評としては、「答弁書について知りたい!」という初心者さんであれば、とりあえずこの本ぐらいからはじめるのが無難ではないでしょうか。
● 『よくわかる本人訴訟Q&A』
新銀座法律事務所 編
(法学書院 2010年2月)
比較的最近の本人訴訟のマニュアル本。前掲の『法務担当者のための民事訴訟対応マニュアル』よりも、より素人向けの入門書です。とはいえ、レベル的には実践向きの水準にあり、決して低くはありません。
ただ、基本的に、原告として訴えていく場合をメインに据えていることもあってか、各種の紛争類型に即した訴状のサンプルがふんだんについており、訴えられる側にとっては無関係な記述が多いと感じるかもしれません。
もっとも、実践水準にあるマニュアルで、訴訟について知識を得たいという方には手堅い本といえるでしょう。
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