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[準備書面の書き方 内容編]
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準備書面の書式に関しては別稿で解説しましたので、今回は、主張の内容面についてです。
まず、記載のスタイルは、「フリー」です。
専門書やマニュアルを読むと、色々と制約のあるようなことが記載されていますが(例えば、後記引用部分参照)、あくまで、それらの制約は「そうあるべき」との理想論に過ぎません。
勿論、その理想に沿って内容が書けるに越したことはないでしょうが、しかし、この記事を閲覧しておられるあなたは、弁護士のような専門家ではないことでしょう。裁判官の方でも、そのあたりの事情は汲みますので、専門家の目からすれば、非常に要領を得ない主張書面となっているとしても、それだからといって、その準備書面を「準備書面として扱ってもらえない」などということはありませんので、安心して、思うように記載すれば良いのです。
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■ 大島明 『書式 民事訴訟の実務』民事法研究会〔平成19年5月〕 336−337頁
準備書面で一番大切なことは、当事者として主張すべき事実(攻撃防御方法)を記載するとともに、相手方の主張した事実(攻撃防御方法)についての認否をするということである。当事者の主張すべき攻撃防御方法としては、請求原因、抗弁、再抗弁、再々抗弁等と段階があるが、可能な限り、その順番で記載しなければならない。
すなわち、原告であれば、請求原因の洩れている部分や新たに主張する事実、抗弁に対する認否、再抗弁に対する事実、再々抗弁に対する認否といった順番で、被告であれば、請求原因に対する認否、抗弁に関する事実、再抗弁に対する認否、再々抗弁に関する事実といった順番で明確に区別して記載しなければならない。
後に提出準備書面になれば、新たな主張や洩れている部分が存在すること自体が、弁論の全趣旨として考慮されたり、時機に遅れた攻撃防御方法となる可能性があるので注意しなければならない。ここにいう攻撃防御方法とは主要事実のことであるが、訴状の箇所でも述べたとおり、重要な間接事実、さらに紛争解決に向けて関連性を有する事情については記載すべきである。
勿論、これらの役割を意識した形で、少なくとも事情については分離して記載しなければならないことも当然のことである。
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とはいえ、「何を書いても良く、どのように書くかはあなた次第」というだけでは、逆に迷ってしまいます。そこで、記載の指針を、参考までにご紹介しておこうと思います。
1 同じ内容を長々と繰り返さない
裁判の流れからしますと、準備書面は、相手方の主張に反論するという形で、交互に提出されていくのが普通でしょう。訴状があって、それに対して認否を答弁書でする、すると、答弁書で理由をつけて否定された事実について、原告としては、被告の主張は間違っている、と再反論していく、・・・というように。
そうすると、おのずから、書くべき対象は決まってきます。
問題は、その対象に関してどのように記載するかですが、例えば、「被告の主張は間違っている」という結論だけを記載するのも、既に記載している主張内容を反復するのも、有意義なものとはいえません。感情的には、「最後の発言は自分でありたい」という気持ちは分からないではありませんが、無駄が多いといえます(但し、弁護士の中にも、コピー&ペーストで写したかのような長大な文章を、繰り返し記載する方もおられます)。
勿論、重要な争点である以上、記載して反論する姿勢を示しておくという意味はありますが、その為には、例えば、「被告が第二準備書面の第3で主張する点に関しては、既に当方の準備書面(1)6頁で反論済みであり、長々と繰り返さない」というような形で工夫をすることも重要でしょう。
2 事実経過を丁寧に説明する
ところで、事実の存否に関する争いは、専門家でなくとも書ける内容です。
あなたの主観からすれば、相手方は口からでまかせの嘘を言っているのであり、それを否定する主張を記載するだけだからです。例えば、「被告はAと主張しているが、Aという事実はなく、Bであった」と記載するわけですね。ただ、「Aという事実はなく、Bであった」と単に記載するだけでは、実のところ、(決定的な証拠がない段階では)水掛け論の域をでません。
そこで、なぜ、「Bである」のかを説明する為に、Bという事実に至る合理的な事実の経緯を記載していくことになるのです。これらは、(要件事実論的に言えば)「事情」に過ぎませんが、むしろ、事実認定を決定づけるうえでの真の争点であると思って、丁寧に説明していってください。
3 判例引用は、前提事実を理解してからするように
次に、本人訴訟を考えるぐらいですから、書店で専門書やマニュアル本を読み最低限の情報を仕入れていることであると思います。そして、テキストの記述、とりわけ、判例を引用して文章を書くこともあることでしょう。その際に注意しなければならないのは、「判例の抜粋」を鵜呑みにしないことです。抜粋は、あくまでも抜粋です。従って、前提となる事実が異なる為、あなたの事例では当てはまらないことも十分ありうることを忘れないでください。
そこで、引用したいような有名判例であれば、できる限り、原文をあたり、少なくとも、(「当事者の主張」は読み飛ばしても)「裁判所の判断」として事実認定されているところを読んで、ご自身の事例と、どこが同じで、どこが違うのかを検討し、本当に有利に援用できるケースであるのかを吟味してください。
もっとも、相手が弁護士ではなく、相手もまた本人訴訟であれば、そこまでする必要はないかもしれません。しかし、そのようにして吟味した上での引用の場合、事実のどこを強調すべきかが理解できてきますので、主張内容にも厚みが増すといえるでしょう。
4 政治演説にならないように
「自分の言いたいことを書いて良い」というのが原則ですが、しかし、自分に直接関係しない社会一般のことを引き合いに出して政治的演説のような文章を書くのも、避けた方が無難です。
仮に書くとしても、例えば、「偽装請負は違法であるとの認識は既に世間一般に周知となっているところであり、然るに、被告が偽装請負が違法でないと思っていた主張することは事実に反し、あるいは、信義に反するものと言うべきである」というような感じで、具体的な相手方の主張に絡めて記載するようにしてください。
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§お勧め資料§
● 『法務担当者のための
民事訴訟対応マニュアル』
田路 至弘 編著
(商事法務 2005年10月)
準備書面についての詳しい解説は、一般にマニュアル本には書かれていません。書式の形式面についての記載でお茶を濁す程度なのがせいぜいです。
本書についても、残念ながら、準備書面の簡単な意義と、ものすごく簡素化された書式サンプルの掲載のみとなっています(129ページに準備書面サンプル、217ページに最終準備書面サンプル)。ただ、ちょこちょこっとした実務的なコメントが数行あるのが光っています。
また、執筆人は弁護士で、出版社も法律専門誌を扱う商事法務、そして、メインのターゲットが企業の法務担当者ですので、実践的な解説、それに書式サンプルなど、使い勝手の良いものとなっています。
特に、一般向けの類書にはないのが、内容面で、満遍なく項目が押さえられています。弁論手続き、控訴・上告、和解手続、承認尋問の項目など、単純な書式サンプルの掲載を超えて、専門家ならではの読み物となっています。
● 『書式 民事訴訟の実務』
大島 明 著
民事法研究会
準備書面の記載例については、3種類の異なったサンプルが掲載されています。そのうち、最終準備書面のサンプルは比較的厚めの記載で、それらを見比べてイメージをつかむのには便利だと思われます。
また、準備書面の書き方については、「準備書面を作成するについて、どのような準備書面、作業をすれば、より効率的に準備書面を作成することができ、的確に提出することができるかという点について、私なりに考えていることを含めて参考までに記述しておく」として、それ以下2ページほどかけて若干の考察がくわえられています。
また、後注での、準備書面の作成に関しての注意書きにしても、必須事項、作成者名や日付けの位置、準備書面として一番大切な点、など素人にとってはお役立ち情報が多いです。
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