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[陳述書の書き方]
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≪陳述書を書いて欲しいと言われたけれど・・・≫
裁判になると、弁護士から書いてくれと言われるのが、この陳述書です。ところが、どのように書くべきなのかについては、説明してくれません。そういった煩わしさを全て任せたはずなのに、今更の話です。「さて、困ったものだ・・・」とネット検索などをかけるというのが、よくあるパターンのようです。
ところで、この【陳述書の意義】たるや、昔からその評価が分かれています。一方では、積極的に本人の意見を斟酌する資料になると評価する意見もあれば、他方では、弁護士の書く(文字通りの)作文であって一切見ないというような評価まであります。なぜ、かくも評価が分かれるのかといえば、おそらく、このタイトルにあるように、依頼人本人において、陳述書の書き方が分からないことが少なからず影響しているように感じます。
というのも、実務では往々にして、弁護士が依頼人から聞き取って起案し、それに署名捺印してもらって作成する陳述書が存在します。このような場合、記載の内容は、訴状等の構成と殆ど変わらず、情報的に新たに付け足すものがありません。
また、その趣旨を説明した上で書いてもらうと、今度は、かなり作為的なものが返ってきたりします。あるケースでは、依頼人が一生懸命になり過ぎて、既に提出済みの答弁書の用語使いを真似るなど、素人らしさが失われていたことがありました。このような場合、裁判官的には、弁護士の(文字通りの)作文としか感じないのではないでしょうか。
従って、以上のような失敗を避けて陳述書が作成されることが望ましいと言えます。
≪陳述書は、「自分の言葉で」≫
では、どうすべきか?
それは、「あなた自身の言葉で、事件の経緯を説明すること」です。
書式は、タイトルを「陳述書」とし、署名と押印、作成日付を入れておけば、あとは、事件の内容を記述するだけです。ですから、書式を気にかけることはありません。日記を綴るように、あるいは、随想を書く感じで、事件の経緯を書いてください。
むしろ、大事なのはその後です。書き上げた陳述書(草案)を前提に、弁護士と、どこまで載せるかについて相談すべきです。不必要な言及から、無用な誤解を誘発するようなケースもやはりありますので、そこは訴訟戦術として、このあたりの記述は削除しよう、あるいは、ここの記述を、もう少し詳しく書いて欲しい、などの指示をまって、最終的に仕上げていくべきだと思われます。
重要なのは、「あなたの言葉」で書かれていることです。ですから、普段使いもしない専門用語などは避け、かといって、あまりにも砕けた調子でもおかしいので、丁寧に書く。そう、就職活動での履歴書を書くような調子で、仕上げてみてください。
≪本人訴訟の場合の陳述書≫
ところで、弁護士を代理人に選任せず、本人訴訟の場合、別の問題があります。
おそらく、本人訴訟の場合、裁判所の方から、「陳述書を提出しませんか?」と促されることでしょう。この時、問われた当事者本人は、「出せと言うなら出しますが」と当惑ぎみに返事するのを見かけます。そうすると、裁判所は、「いえ、命令ではなく、あくまで出すのであれば任意です」と答えます。しかし、「任意です」というのは、裁判所の立場上そう答えざるを得ないからであり、実際問題としては、出すべきなのです。
おそらく、このやり取りは、当事者本人の方では、陳述書を出す意味が分からないから生じています。本人訴訟の場合、裁判所が丁寧に口頭期日において質問してくれ、その際に、当事者本人は、自分の主張は既に口頭で話しているので、「どうせ同じことを書くだけなのに、なぜ、出す意味があるのか?」と疑問に感じてしまうのではないでしょうか。
しかし、この疑問は、素人的には当然ですが、訴訟法的には間違っているのです。
というのは、期日における主張は、主張に過ぎません。これに対して、陳述書は証拠なのです。勿論、弁論の全趣旨というロジックを介して、主張だけでもその主張に沿った事実認定は可能です。しかし、できれば、そういう一般条項を介した事実認定よりも、裁判官的には、具体的な証拠に基づいた事実認定をしたいのです。そして、これに答えるのが、【証拠としてのあなたの陳述】、即ち、陳述書なのです。
平たく言えば、陳述書は、領収書や契約書を提出するのと同じ次元にあるのです。他方、期日における口頭での主張は、訴状や答弁書を提出しているのと同じ次元にあるに過ぎないのです。つまり、陳述書の提出は、かなりラフなイメージとなりますが、証人尋問(この場合は、本人尋問ですが)を自主的に済ませたようなものだと、思ってください。
根拠なく主張だけをするよりも、証拠に基づいて主張をする方が、説得力があるとは思いませんか? その為にも、裁判所に促されたら、素直に従って陳述書を作成して提出してください。
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§お勧め資料§
● 『法務担当者のための
民事訴訟対応マニュアル』
田路 至弘 編著
(商事法務 2005年10月)
陳述書の書式サンプルとともに、簡単な概要、実際にどのようにして陳述書が作成されるのかの実務の取り扱い、また、どのような場面、流れの中でその作成が求められるのかの実務の手続きといったものについても、きちんと説明されている、一般の読者向けのマニュアル本です。
また、執筆人は弁護士で、出版社も法律専門誌を扱う商事法務、そして、メインのターゲットが企業の法務担当者ですので、実践的な解説、それに書式サンプルなど、使い勝手の良いものとなっています。
特に、一般向けの類書にはないのが、内容面で、満遍なく項目が押さえられています。弁論手続き、控訴・上告、和解手続、承認尋問の項目など、単純な書式サンプルの掲載を超えて、専門家ならではの読み物となっています。
● 『書式 民事訴訟の実務』
大島 明 著
民事法研究会
こちらは、残念ながら、陳述書についての解説は(ザットみたところ)ありません。もっとも、それ以外の書式等については充実しており、やはり実務書といえるのではないでしょうか。
また、注で書かれている形式面での注意書きが(痒いところに手が届くという感じで)役立つことが多いです。
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