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Lawschool 趣味の法律セミナー
[“本人訴訟は不利である”、改めて、その覚悟を]
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≪経験の差、感情面での弱さなど≫
何はともあれ、本人訴訟をしてみることに決めたのなら、もう一度再確認しておきたいのが、「本人訴訟は不利である」ということです。相手も本人が受けて立つ場合は別として、相手が弁護士を立ててくるような典型的なケースになると、そこらの実務書を読んでいるだけでは分からない、経験や肩書きに基づいた立場の違いをみせつけられることもあるでしょう。
まず、法廷に初めて立ったとき、場慣れしていないその経験の差は大きなものです。
非常に緊張しますので、後日振り返ってみて、例えば、裁判長の釈明に対して、混乱した回答をしていると感じることが多いのではないでしょうか。そして、そのような的を外れた回答をしてしまうこともあって、裁判所に対して、素人っぽさを、より印象づけてしまいます。
こうなると、主張そのものについて軽く見られることにもつながります。
つまり、法律面での主張に関して、準備書面などで同じことを書いていたとしても、弁護士の場合であれば、「一応法律的根拠に基づいているのかもしれない」というところから評価が始まってくれますが、こと我々市民の場合には、「主観的な思い込みが強すぎて、感情でものを言っている」というところから評価が始まることになります。
ただ、そのように感じるからこそ、裁判所は、法廷で、釈明をしてくれるのでしょう。
ところが、それが逆効果な場合もあるのです。もとより、裁判官としては、本人の主張を補ってやろうという親切心から出たことなのでしょう。そのような趣旨は、傍から他人のケースを眺めている際には分かります。問題は、自身の訴訟なのです。この場合には、むしろ、“なぜ、私の方だけ、そんなにも否定的な意見をぶつけて、根掘り葉掘り質問するのか?”と不公平感を感じることにつながりかねないのです。
このことは、頭では理解できていても、感情面では、悔しく感じことが多いと思います。
そう、本人訴訟における、一番厄介な問題は、「感情」です。
他人の紛争と違い、まさに、自分の紛争であり、それも、裁判を起こしてやろうとまで激しい感情をピーク時には抱いた事件なのです。この点で、最初から、冷静さを欠いているというハンデがあることを忘れないてください。
これに対して、相手が弁護士を立てていれば当然のこと、そうでなく本人が受けて立つケースであっても、被告となる本人は冷静なものです。被告本人は、あなたのその感情に配慮を払う気がなかったからこそ、それを踏みにじり、今に至っているのですから。日々のルーティンワークをこなす感覚で受けて立つのですから。
≪いわゆる「被告の嘘」≫
これに関連して、相手方が弁護士ケースの場合、いわゆる「嘘つき」問題がでてきます。
法律カテゴリーの相談掲示板などを見ていると、時折、「相手方が嘘八百を並び立てて…」との話題が出てきますが、その手の問題です。これは、弁護士が入っていても同じく生じるばかりか、むしろ、弁護士が間に入ることで、その敵方であるあなたに対して容赦なく侮辱の言葉(主張)を投げつけ、あるいは、なにやら専門的な用語を並び立てて煙に巻いてもくるので、よけいに憤慨させられることにもなったりします。
しかし、これは冷静に対処しなければなりません。つまり、いちいち腹を立ててはいけません。
まず、弁護士には、真実義務はなく、むしろ、依頼人に対して最善を尽くすべき義務を負っているということを知ってください。そして次に、その関係で、仮に、依頼人の話が嘘っぽかったとしても、代理人弁護士は、その嘘っぽい話の中から、「依頼人にとって最も利益になるように主張するには、どう取捨選択すべきか」を勘案して主張をしてくるということを知ってください。
以上を知れば、もうお分かりですよね。相手の主張に対して、いちいち「嘘つき」だと腹を立てるよりも、「嘘しかつけないのだ」と考えを改めて、その虚偽を淡々と事実をもって暴いていってください。その際には、あくまでも、淡々と書くことを意識してください。ここで、「淡々に」とは、相手を中傷しないということです。例えば、「嘘つきだ」とか、「犯罪者だ」とか、そういう個人の人格にネガティブな主張はしない、ということです。
また、おおよそ、虚偽の主張しかできない場合というのは、事実の点について「触れたくともできない」という場合が多いです。ですから、できる限り、こちらの把握している具体的な事実を記載し、相手から、事実に関する陳述を引き出せるよう、工夫してみてください。それでも何らの返答もなければ、それはそれで、成功だと思って良いと思います。
≪本人訴訟の場合、弁護士は舐めてかかってくるもの≫
もっとも、本人訴訟の場合、相手方の代理人弁護士は、かなり、舐めた対応をすることがあります。例えば、相手方の主張書面の返答の差で歴然としていたりします。
そもそも、本人訴訟の場合、被告代理人から、答弁書以外返ってこない場合すらあります。
ところが、これが実務一般なのかといいますと、少なくとも、弁護士同士の訴訟の場合、準備書面が出されると、既に同じような内容のものであり、反論も同じようなものであっても、対抗しての準備書面が返ってくることが多いです。それはもう、コピー&ペーストで大部分が作られたなと思うようなものに過ぎなくても、返ってきます。
更に、被告代理人弁護士は、こちらが素人だと見るや、場合によっては、管轄移送の申立をあえてして、びびらせてきたりもします。被告というのは、答弁書さえ出しておけば、後は、遠方の場合、電話会議で対応可能になりますので、本来的には(特に、弁護士が代理人の場合)管轄は苦にならないのですが、法律的な知識差に基づいて、そういうコズルイ手法で、嫌がらせまでしてくる場合があることを知っておいてください。
他にも、色々と事実上の不利さを感じさせられることが多いと思いますが、何よりも、「冷静さを失い、本来の能力の半分も出せていない」ということを、よくよくご自身に言い聞かせることが大事だと思います。
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>> 専門家でない普通のあなたが裁判をするには? そのノウハウを解説
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§お勧め資料§
● 『法務担当者のための
民事訴訟対応マニュアル』
田路 至弘 編著
(商事法務 2005年10月)
民事訴訟手続きの全般について、本格的な解説およびサンプル書式がそろった、一般向けのマニュアル本です。
目次ページで紹介した新銀座の『Q&A』から、次のステップアップにはこの本が適当ではないでしょうか。
執筆人は弁護士ですし、また、出版社も法律専門誌を扱う商事法務、そして、この本のメインのターゲットがそのタイトルにもあるように企業の法務担当者ですので、本書の全般的な評価としては、内容面において使い勝手の良いマニュアル本だと思います。
● 『書式 民事訴訟の実務』
大島 明(民事法研究会 2012年5月)
民事訴訟をする上での基本的な手続きの解説とともに、書式のサンプルが載っている実務書です。各種の訴訟類型ごとの訴状・準備書面等の記載例も載ってもいます。
書式のサンプルを探しているような初心者の場合、不確かなネットのものよりも、まずは、著者が明らかな、こういうテキストの記載例を参照することの方が無難だと思います。
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