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Lawschool 趣味の法律セミナー
[民事訴訟に関する法律や手続きを、学習する]
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≪訴状の起案だけなら、ネットのサンプル・書式資料で事足りる??≫
ご自身の主張が、民法をはじめとした法律に照らしても、やはり妥当なものであるとの確信を得た、そして、裁判後の現実の回収の見込みもある、あるいは、現状の立法には不備があってその勝算は薄いものの、ともあれ裁判を提起したいなど、ついに【裁判の決心】がついたのなら、訴状の起案に取り組むことになります。
さて、このコンテンツを閲読しているような方であれば、訴状の起案の段となると、「訴状 書式」「訴状 サンプル」などの検索ワードで資料集めに走るのではないでしょうか。個人的な感想としては、基本的に、それで構わないと思います。
本人訴訟をする動機には様々なものがありますが、やはり多いのは、「弁護士に頼むと費用倒れになる」ということでしょう。そして、コストの観点からは、いまどき、ネットに本人訴訟の支援サイトは数多あり、訴状のサンプル、書式資料も、すぐに見つかるので、それらを活用しない手はないでしょうから。
特に、本人訴訟に適した事案というのは、「他人が本人訴訟でやった事案と、大差がない」ので、単純に訴状を作成するだけであれば、他人の物まね訴状でも及第点に達するものになるはずです。
従って、マニュアル本やネットのサンプル書式を活用して、訴状を作成することは、あながち否定されるものではないと考えます。
≪やはり、ネットの資料のみに頼らない!≫
以上のように、余分な費用をかけずとも、それなりに訴状の作成は可能です。ただ、「訴状の作成」の為にお金をかけないとしても、「裁判で勝つ」為には、やはり、ある程度、民事訴訟に関する法律や手続きを、きちんとした教材で学習しておいた方が無難です。やはり、ネットの資料というのは、常に、信憑性に欠ける嫌いがありますので。
そこで、訴状の提出後、第一回の期日までにひと月からひと月半ほど期間があきますので、少なくとも、その間に手ごろなテキストを入手して(つまみ食い的にでも)勉強しておくべきだと思います。
まず、マニュアル本も入門としては結構、いや、むしろ好ましいのですが、それを通読した後には、次の一冊を、ぜひ、(図書館で借りるなりして)手元に置くようにしてください。藤田広美著『講義 民事訴訟法』(後掲参照)です。
この本が出るまでの基本書と呼ばれるテキストは、極めて学問的なものか、あるいは、実務的には知りたいところが具体的に書かれていないか、のどちらかでした。その為、「自分の裁判に直接的に関係するような話題やネタを知りたい!」といった本人訴訟を志向する人たちにとっては、不向きなものばかりだったと言えます。
ところが、この本は、本当の知識と経験を持った実務家が著した【実務向けのマニュアル本】になっており、実戦向きの教科書と言えます。従って、本当の初心者を終えて、「少しずつでいいから自分に関連する部分だけでも勉強したい!」というような方には、本格的なテキストは他にもありますが、この藤田・民事訴訟法をお勧めします。
なお、藤田・民事訴訟法には、幾種類かの訴状のサンプルを載せつつそれら訴状の解説をするチャプターもありますので、訴状作成の段から手元に確保できるのであれば、それに越したことはありません。
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● 『講義 民事訴訟』
藤田広美(東京大学出版会 2011年5月)
ロースクール(法科大学院)などでも使われる、基本書。
従前、基本書としては他にも、伊藤 眞、新堂 幸司、上田 徹一郎、高橋 宏志の著作が有名でしたが、いずれも、本人訴訟の為の学習書としては、学問的過ぎて適しておりません。
一例を挙げれば、訴訟物論という概念的な争いが学問的にはあります。まさに大論争なのですが、実務的には、旧訴訟物論で運用されています。にもかかわらず、上記テキストでは、伊藤のものを除いて、新訴訟物論の立場で著されています。結果、素人にとって、裁判の遂行上あまり関係のない部分で惑わされる危険があります。
その点、本文でも書きましたが、この藤田のテキストは、あまり学問的なところに深入りしないタイプとなっており、また、訴状の記載のサンプル解説があったり、準備書面の記載方法や証拠説明書の解説があったりと、裁判を遂行する上で必要な点について具体的に著されています。
そういった観点からすると、他の本格的なテキストと比べると、このテキストが適当であると思います。
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>> 専門家でない普通のあなたが裁判をするには? そのノウハウを解説
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§お勧め資料§
● 『法務担当者のための
民事訴訟対応マニュアル』
田路 至弘 編著
(商事法務 2005年10月)
民事訴訟手続きの全般について、本格的な解説およびサンプル書式がそろった、一般向けのマニュアル本です。
目次ページで紹介した新銀座の『Q&A』から、次のステップアップにはこの本が適当ではないでしょうか。
執筆人は弁護士ですし、また、出版社も法律専門誌を扱う商事法務、そして、この本のメインのターゲットがそのタイトルにもあるように企業の法務担当者ですので、本書の全般的な評価としては、内容面において使い勝手の良いマニュアル本だと思います。
● 『書式 民事訴訟の実務』
大島 明(民事法研究会 2012年5月)
民事訴訟をする上での基本的な手続きの解説とともに、書式のサンプルが載っている実務書です。各種の訴訟類型ごとの訴状・準備書面等の記載例も載ってもいます。
書式のサンプルを探しているような初心者の場合、不確かなネットのものよりも、まずは、著者が明らかな、こういうテキストの記載例を参照することの方が無難だと思います。
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