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Lawschool 趣味の法律セミナー
[要件事実とは、なんですか? どう活用するの?]
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≪要件事実って、何ですか??≫
裁判に関わっていると耳にするかもしれない言葉に、「要件事実(ようけんじじつ)」という用語があります。
司法制度改革に伴う法科大学院が始まる以前、つまり、旧司法試験の時代までは、実務家にでもならない限り全く知れ渡っておらず、法学部生というだけでは、「何ですか、それ?」との反応が返ってきそうな専門用語でした。
その「要件事実」ですが、平たく言えば、訴訟における攻撃・防御のポイントとなる項目のことを指しています。
従って、言葉の響きこそ硬いのですが、内容的には大したことがないので、一生に一度あるかないかの本人訴訟をする上では、さして意識せずとも支障のない事柄とも言えそうです。
≪要件事実の、素人的活用方法!≫
このように、要件事実については、本人訴訟の為だけに勉強してまで知っておく必要はありませんが、しかし、深く勉強せずとも、それを活用する方法があるのです。
先ほど、厳密さには欠けますが、極アバウトながらにも、要件事実の意味を説明しました。即ち、「攻撃・防御のポイントとなる項目である」と。では、この意味を踏まえて、それを本人訴訟で活用できないかを考えてみてください。
答えは、次のようになります。
法律実務家でない素人には、裁判における争点やその重要度といったものが分からないことが普通でしょう。その為、裁判的にみて、あるいは、法的にみて【意味のある主張】か否かに関わらず、ある事柄について、「それについて述べたいから」との全くの【主観的な動機】に基づいて、延々と横道にそれた答弁に始終することがあります。
しかし、いくら長く述べても、また、その述べた内容が真実であり、かつ、それを証拠で裏付けることができたとしても、その裁判の結論にとって意味のないことの場合、ご本人にとっては感情的な満足が(一時的にも)得られるのかもしれませんが、実のところは、全くの無駄であり、ましてや、その裁判で結論において敗訴などしようものなら、いよいよ徒労感に打ちのめされるのではないかと思います。
もし、あなたの裁判において、あらかじめ、「何について重点的に述べる必要があったのか」を知ることができれば、大いに助かるとは思いませんか?
そこで出てくるのが、要件事実なのです。そう、要件事実とは、まさしく、その「何を重点的に述べるべきか」についての答えなのです。
≪具体的には、どう使うの?≫
では、具体的な、お手軽活用方法の解説に移りましょう。まず、後掲の参考文献から、「不法行為に基づく損害賠償請求」をサンプルとして利用することにします。
【要件事実】(岡口基一『下巻(2版)』144頁⇒現3版では、第2巻)
(1) 原告の権利又は法律上保護される利益の存在
(2) (1)に対する被告の加害行為
(3) (2)についての故意又は過失
(4) 損害の発生及び額
(5) (2)と(4)との因果関係
以上です。注目すべきは、たったこれだけの項目なのです。
しかし、それと知って、意識して主張・答弁をするのと、何も知らずに、ただネットに転がるサンプルを引き写して、見よう見まねで書くだけとでは、やはり違ってくるものです。というわけで、一冊の本としては分厚いのですが、実際に使う部分は僅少なので、ぱらぱらとめくって項目ぐらいは調べておきましょう。
ただし、要件事実はそれが的確に主張されなければダメな【必要不可欠な骨格】ではありますが、しかし、それのみで足りるものでもありません。必要に応じて、周辺の事情などを丁寧に述べるよう心がけてください。
なお、法律実務家であっても(あった方が便利とはいえ)、訴えの提起の時点でチラリと参照するぐらいのものであり、熟読するというようなものではありませんので、本人訴訟の為だけに購入する必要はないと思います。
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● 『要件事実マニュアル 第3版』
岡口 基一(ぎょうせい 2010年)
今や、どの実務家の書棚にも鎮座している類の本。要件事実の定番本。
旧版までは、民法などの実体法を理解する為には、あまり使い勝手が良くありませんでしたが、上下巻・2文冊セットが、5冊シリーズへとボリュームアップしたことに象徴されているように、基本的知識や参考文献リストなど、学習にも配慮されたものになっています。
要件事実本の中では、項目が網羅的に収められていて便利である上、どこが要件事実の項目であるかも、視覚的に分かりやすく(解説と)分離されており、比較的調べやすいと感じます。
また、それぞれの項目で、「よって書き」についての記載例などもついており、初心者にとってはありがたいものといえるでしょうか。
【目次】
第1巻(民法)
第1編 総論
1 要件事実論総論
2 民事訴訟一般
第2編 民法1
1 民法総則
2 物権
3 債権総論
第2巻(民法)
第3編 民法2
4 契約総論
5 契約各論1
6 契約各論2
7 不法行為
8 親族・相続
9 不動産特別訴訟
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>> 専門家でない普通のあなたが裁判をするには? そのノウハウを解説
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§お勧め資料§
● 『法務担当者のための
民事訴訟対応マニュアル』
田路 至弘 編著
(商事法務 2005年10月)
民事訴訟手続きの全般について、本格的な解説およびサンプル書式がそろった、一般向けのマニュアル本です。
目次ページで紹介した新銀座の『Q&A』から、次のステップアップにはこの本が適当ではないでしょうか。
執筆人は弁護士ですし、また、出版社も法律専門誌を扱う商事法務、そして、この本のメインのターゲットがそのタイトルにもあるように企業の法務担当者ですので、本書の全般的な評価としては、内容面において使い勝手の良いマニュアル本だと思います。
● 『書式 民事訴訟の実務』
大島 明(民事法研究会 2012年5月)
民事訴訟をする上での基本的な手続きの解説とともに、書式のサンプルが載っている実務書です。各種の訴訟類型ごとの訴状・準備書面等の記載例も載ってもいます。
書式のサンプルを探しているような初心者の場合、不確かなネットのものよりも、まずは、著者が明らかな、こういうテキストの記載例を参照することの方が無難だと思います。
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