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Lawschool 趣味の法律セミナー
横から目線で、本人訴訟
[§01 弁護士という名の敵、その仕事振りは?]
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本シリーズは、3日前まで民事訴訟法の条文すら見たことがなかったというような、ごくごく普通の人にとって、不要不急のトピックです。本人訴訟の為には、もっと優先して学ぶべき事柄があるはずですが・・・。
●今回の素材
加藤新太郎ほか 「(座談会)立証活動のスキルと現実(上)(下)」判タ1332号・1333号
≪弁護士と聞いただけで、びびらない為に≫
本人訴訟に臨む皆さんにとって、相手方に訴訟代理人として弁護士がつくと、それだけでかなりのプレッシャーを感じることでしょう。弁護士という資格には、やはり、それだけの格があるわけです。その裏返しというべきか、私たち素人には、素人ゆえの不安というものがつきまといます。例えばそれは、「実務を何も知らないがゆえの無作法」などです。
しかし、結論から言えば、素人ゆえに色々と実務の作法に反することをやってしまうかもしれませんが、本質的には大した失敗ではないことが多いので、あまり萎縮せずにいるのが賢明です。
色々とその理由はつけられますが、手っ取り早い“気休め薬”として、今回の素材論文を取り上げました。
さて、今回の素材論文は、判例タイムズ誌で連載された「(研究会)事実認定と立証活動」のフォローアップ企画として組まれたものです。本来は、実務家を対象にしたかなり実用的で、高度な読み物ですが、それだけにとどまらないのが良書の長所です。実際、私たち素人目線で読む場合、“今時の弁護士さんの仕事振りについて、裁判所が批判的な目で見ている”という読みもとして理解することができるのです。
つまり、「弁護士といえども、実務の作法について必ずしもハナマル評価をもらっているわけではない」のです。この実感は、錯覚であろうとも、儲けものですよね。それにより、「素人ゆえの無作法」をおそれて、過度に萎縮することがなくなるのではないでしょうか。
素材論文では直接的に言及されているわけではないのですが、実務の作法について、最近、弁護士の中にも困ったさんが散見されるという問題があるようです。というのは、弁護士人口の急増により、「いそ弁」にありつけず、「軒弁(のきべん)」ならまだしも、「即弁(そくべん)」あるいは「即独(そくどく)」という、先輩弁護士の元で学ばないまま司法修習後に即独立している新人弁護士が、無視できない数になりつつあるからです。
この場合、そもそもプロとして裁判実務の作法を教わる機会があまりありませんので、その法律知識については司法試験および二回試験によって保証されているとしても、法廷での立ち居振る舞いや主張の節度といったプロ意識をはじめ、実際の裁判手続きや書式といった技術的なことについてまで、皆さん方と大して違わないおそれがあるわけです。
そして、本人訴訟に臨んだ皆さんと対峙する弁護士といえば、普通は、若手の弁護士ですよね?
素材論文では、以上の事情が(あくまで)行間から読み取れますので、「弁護士と聞いただけで、びびらない」ようになる為にも、ざっとで良いから目を通すことをお勧めします。座談会として口語体で、カッチリとしておらず読み口も優しいです。
≪今時の弁護士さんの仕事振り≫
素材論文(上)18頁で、「小規模事務所の訴訟活動」として、村田渉判事が、下記のようにまとめておられます。
長短両面を、大規模事務所と対比して述べられているのに留意しなければなりませんが、
(1)の事案の検討や判例調査が不十分、論点の抜け落ち
(2)の請求の趣旨が不合理、請求の原因が不十分・不備
という点の指摘は、私たち素人を大いに安心させるのではないでしょうか。弁護士であってもなかなか上手くできないことなのですから、ずぶの素人が上手くできなくても当然のことなのです。
また、大手事務所の場合の問題点としてですが、「(相手方が一方的に求めてきた)釈明に応じない限り、一切の主張をすることはできない」というような、嘘のよう真も指摘されています。子供の駄々のような戦術ですが、それが「プロの手法」なのだと知れば、裁判をみる新たな視点も生まれてくるのではないでしょうか。
更に、別の箇所では、裁判所からの簡単な釈明に対して、即座に、適切に答えられないことへの悪印象が指摘されています。ここは重要ですので、忘れないようにしましょう。
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村田発言
まず、小さな事務所では少人数の弁護士が非常にこじんまりと対応するのが基本ですから、(1)事案についての検討や判例調査等が不十分になることがあり、論点が抜け落ちることがあるように思われます。また、準備書面等で採用されている法律構成に疑問を感じることもあります。
(2)事件の見通しや解決に向けた方向性などは意見交換などを通じて依頼者(クライアント)との間に意思疎通ができており、確認されていることが多いように思います。この点に関しては、むしろ細かな争点・論点を網羅的に取り上げるのではなくて、この部分が依頼者の不満の原因であり、この事件のポイントですというような主要な争点に絞った局地戦といいますか、事件の内容に応じてメリハリをつけた主張立証活動をすることが比較的多いように思います。
もちろん、小さな事務所であっても事務所の内情によっては、須藤さんの言われたとおり若手の弁護士に任せっきりにして、ボス弁やベテランの弁護士は全然法廷等に出てこないという事務所もあります。そのような事務所の場合は、例えば請求の趣旨が不合理な内容であったり、請求原因の記載が不十分・不備であったりすることがあり、裁判所として訴訟の進行について不安を感じることがあります。ただ、小さな事務所であっても、ベテランの弁護士と若手の弁護士が話し合ってよく事案を検討している事務所もありますので、そのような事務所では、そのあたりはスクリーニングが行われているのではないかと思っています。
(3)小さな弁護士事務所ですと、訴訟準備を比較的短時間で行うことが可能であり、全体的にバランスのとれた主張が提出されることが多いようです。ただ、先ほども述べましたとおり、法律構成や判例調査等の点で調査・検討が不十分な場合が散見されるように思われます。
また、(4)準備書面も膨大なものではなくて、その内容も簡潔で比較的明快なことが多く、大手事務所の場合のような、以前の主張と同じような内容の主張書面が繰り返し提出されることは比較的少なく、訴訟の比較的早期の段階から和解交渉に入れることが多いように思われます。
(5)人証調べでは事件内容を十分に知った少人数の弁護士が担当することで、真の争点に的を絞った的確な尋問を行うことが可能となり、またメリハリのついた主張立証が行われているように思います。
(6)小さな事務所ですと、もちろん事件自体が中小の事件であるということもあって、担当弁護士と依頼者との間に十分な信頼関係が築かれていることが多いように思います。そのようなことから、以前には、依頼者が担当弁護士の説得に応じやすく、裁判所の和解案を受け入れやすい環境があるのではないかと思っていたのですが、最近では中小規模の事務所であっても依頼者と弁護士との間の信頼関係がそれほど強固ではないのではないかというケースが散見されるようになり、少し心配しております。
(7)争点整理手続での争点・論点の展開や証拠関係の変化などに対しては、もちろん事務所や弁護士にもよりますが、比較的迅速に対応し、その手続中に一応のことを述べ、それなりの説明、釈明を行って速やかに書面を提出することができることが少なくないようにも思います。
(8)相手方の主張立証についての求釈明は限定的・制限的に行われ、事案にもよりますが、多くの求釈明の申立てを行い、相手方からの釈明がなければそれ以上の主張立証ができないという対応がされることはそれほど多くないように感じております。
(9)弁護士報酬については、タイムチャージ制よりは従来からの着手金・成功報酬制を採用されている事務所が多いようですから、和解交渉にあたっては、この点について留意して交渉を進めなければならない場合もあります。
また、(10)進行協議期日や争点整理手続、和解交渉における対応は、訴訟の比較的早期の段階から本音ベースで本件の問題点等を指摘し、あるいは進行上の要望等が述べられることがありますので、裁判所としても、それらをふまえて的確な訴訟指揮等をすることができる場合が多いように思います。
(※ ネット閲覧の便宜上、適宜改行等を加えた。)
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≪訴訟活動とスキルの現実とは?≫
(未完)
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● 『要件事実マニュアル 第3版』
岡口 基一(ぎょうせい 2010年)
今や、どの実務家の書棚にも鎮座している類の本。要件事実の定番本。
旧版までは、民法などの実体法を理解する為には、あまり使い勝手が良くありませんでしたが、上下巻・2文冊セットが、5冊シリーズへとボリュームアップしたことに象徴されているように、基本的知識や参考文献リストなど、学習にも配慮されたものになっています。
要件事実本の中では、項目が網羅的に収められていて便利である上、どこが要件事実の項目であるかも、視覚的に分かりやすく(解説と)分離されており、比較的調べやすいと感じます。
また、それぞれの項目で、「よって書き」についての記載例などもついており、初心者にとってはありがたいものといえるでしょうか。
【目次】
第1巻(民法)
第1編 総論
1 要件事実論総論
2 民事訴訟一般
第2編 民法1
1 民法総則
2 物権
3 債権総論
第2巻(民法)
第3編 民法2
4 契約総論
5 契約各論1
6 契約各論2
7 不法行為
8 親族・相続
9 不動産特別訴訟
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>> 専門家でない普通のあなたが裁判をするには? そのノウハウを解説
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§お勧め資料§
● 『法務担当者のための
民事訴訟対応マニュアル』
田路 至弘 編著
(商事法務 2005年10月)
民事訴訟手続きの全般について、本格的な解説およびサンプル書式がそろった、一般向けのマニュアル本です。
目次ページで紹介した新銀座の『Q&A』から、次のステップアップにはこの本が適当ではないでしょうか。
執筆人は弁護士ですし、また、出版社も法律専門誌を扱う商事法務、そして、この本のメインのターゲットがそのタイトルにもあるように企業の法務担当者ですので、本書の全般的な評価としては、内容面において使い勝手の良いマニュアル本だと思います。
● 『書式 民事訴訟の実務』
大島明(民事法研究会 2009年11月)
民事訴訟をする上での基本的な手続きの解説とともに、書式のサンプルが載っている実務書です。各種の訴訟類型ごとの訴状・準備書面等の記載例も載ってもいます。
書式のサンプルを探しているような初心者の場合、不確かなネットのものよりも、まずは、著者が明らかな、こういうテキストの記載例を参照することの方が無難だと思います。
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