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過払金請求は、減額されることが多い?
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≪減額の話って、本当?≫
過払金の返還請求に関して、弁護士・司法書士などに相談を持ちかけると、「過払請求は、減額される場合が多い」と説明されたという話を時々耳にしますが、これは、果たして本当なのでしょうか?
結論的には、これは、考え方の問題のように思われます。
例えば、ある弁護士のブログ(記事)などを見ていると、「減額など、論外だ!」と言わんばかりの勢いで、【動産執行】までかけて、債権の満額回収に必死に取り組んでくれる様子をうかがい知ることができます。
ここで、【動産執行】とは、例えば、事務所にあるパソコンやプリンターといった動産を取り上げて、それを弁済の原資に充てるという、強制執行の手続きを言います。普通の弁護士であれば、口をそろえて、「手間と費用ばかりがかかり、あまりお金の回収が見込めないので、やらない」と言うような手続きですが、前述の弁護士のように、それでも試みてくれる専門家もいることが分かります。
ただ、逆に、そこまでやる弁護士に対しては、消費者金融側も、事実上の財産隠しで対抗するようで、執行の空振りも多く、中々に苦労なさっておられるようです。そこで、実務上の知恵として、「過払請求は減額される場合が多い」と考える弁護士が出てくるのでしょう。
おそらく、ある程度の減額を容認する弁護士は、「ほどほどでの和解」で決着をつけるのでしょう。その場合、少なくとも、そこで支払うと約束された金額の回収は、比較的スムーズに運ぶことが予想されます。
つまり、苦労をかけても財産隠しによって現実の回収が見込めないのと、苦労をかけず大人の決着金で解決を図るのと、どちらが利巧か、あるいは、依頼人の利益につながるか、という利益の天秤にかけた結果(経験)の選択なのかもしれません。
ただ、だからと言って、依頼人の意志に反して、勝手にその選択をするかことが誠実な受任者なのか、という問題は残ります。
従って、依頼者としては、そのことの説明がされないならば、むしろ、ご自身はどちらの選択を望むのかについて意思表明をなさって、意志の疎通を図っておくことこそが大事だと言えるでしょう。
≪最近の事情?≫
もっとも、最近は、やや情勢が変わりつつあるようです。
別のある弁護士ですが、「消費者金融の経営状況が悪いせいか、最近では和解の話も上手くできない」とぼやいている記事がありました。
その記事によれば、最近多いのは、「答弁書の期日前日提出」だそうです。しかも、「おって認否する」との、ひと言答弁。その結果、初回期日が無駄に終わるとか。また、お決まりの反論が異口同音に出てくるため、無意味な期日を重ねてしまうとか。これにより、紛争の解決、即ち、判決までに時間を要してしまうのだとか。
ただ、裁判では、期日直前の答弁書提出や、追って書きによる認否も、それ自体としては普通にあることです。従って、その実務慣行一般を非難するのであれば格別、そうではなく、過払金訴訟における消費者金融の対応に限って非難するのであれば、必ずしも公平であるとは言いがたいように感じます。
なお、消費者金融は、時々、「分割払いの和解で裁判を回避しつつ、その後、実際には支払わない」というアコギな手法を使うところもあるようです。従って、和解に応じるのであれば、履行が完全に為されるような手立てについて、弁護士・司法書士が周到に配慮してくれているかについても、確認しておきましょう。
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● 『Q&A 過払金返還請求の手引(4版)』
名古屋消費者信用問題研究会 編著
(民事法研究会 2010年6月)
過払金返還請求訴訟を(自分で)やろう思うなら、お勧めなのが、この本。
基本的な論点となるべき箇所が網羅され、その上、各種訴訟資料のサンプル、利息計算用のエクセルシートのデータファイルまで付属されており、実務者向けの完全なマニュアル本となっています。
値段的には、3版の3000円からするとやや高くなりましたが、執筆者が弁護士なので、内容面での正確性にも安心があります。
この本を買って手元に置きつつ、なお不明な点について他の本を立ち読みなどでつまみ食いすれば、事足りるのではないでしょうか。
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§お勧め資料§
● 『簡裁消費者訴訟の実務』
司法書士執筆の訴訟実務本。消費者訴訟の分野について、主要な領域がカバーされており、かつ、近年過払いバブルに湧いていた司法書士業界だけあって、過払金返還請求などに取り組もうとする駆け出し実務家向けのマニュアル本(専門書)となっています。
従って、過払金返還請求を初めとした債務問題で、本人訴訟を考えるのであれば、これをお勧め。
訴状記載例などの書式サンプルも豊富なうえ、記載例それ自体もある程度のまとまりのあるものとなっており、素人には非常に参考になるのではないかと思われます。
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