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過払金トラブル                                 目次へ戻る


  業者が、取引履歴を開示してくれない! 裁判における立証軽減
  (取引履歴の開示は、業者の義務です)



≪問題の所在 それは、主張・立証の困難≫


過払金の返還請求(訴訟)というのは、民法の用語に従って言いなおすと、不当利得の返還請求(訴訟)となります。その為、裁判をするに当たっては、不当利得の返還請求訴訟の一般と同様のルールに従うことになります。その場合、原則として、請求者(原告)が、色々と主張・立証の責任を負うことになります。

問題は、その主張・立証項目の中に、「過払金として請求するお金、つまり、当時、弁済として支払ったお金が、【くだんの貸付金に対する弁済】として支払われたものであること」も含まれるという点です。

ちょっと、考えてみてください。長年の取引の「借りては返し」の反復によって、個々の支払いが、どの契約に基づく支払いであったかを(今更)正しく把握できるひとなど、そう多くはいないではありませんか?

つまり、取引履歴の開示なくしては、「どの契約に基づいて借りたお金に対しての弁済として支払われたお金なのか」を把握するのが困難であるとの実情があります。そして、その主張・立証がうまくできないと、裁判では負けてしまいます。

そうすると、業者としては、取引履歴を開示しないほうが得策ということに繋がりかねません。




≪今回の裁判の意義  「弁済時の貸付残高0円」と推定!≫


このような事情があり、既に、最高裁(最判平成17年7月9日)において取引履歴の開示義務があることが確認されていましたが、今回の裁判例では、【なおも開示しない悪質業者】に対して、裁判においてどのように扱うかとの指針を与えました。

具体的には、今回の裁判では、業者側が取引履歴を不当に開示しない場合、主張・立証責任を転換(信義則、経験則の適用?)した上、業者側が抗弁として主張・立証しないと、「控訴人〔注:借り手〕が主張立証する被控訴人〔注:業者〕に対する最初の金員の交付(弁済)時の本件取引の貸付残高は0円とするのが相当である」(判タ1310号162頁)と判示しています。

平たく言えば、「原告が主張する最初の弁済から後は、全部過払いと事実認定するよ?」とのペナルティを与えました。

下級審の判例ながら、大変意義深いものがあるといえるでしょう。




≪取引履歴の保存期間 少なくとも、最終取引日より10年≫


なお、この裁判例では、取引履歴の保存期間についても言及されています。

「貸金業者は、債権者から取引履歴の開示を求められた場合には、その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情がない限り、保存している業務帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う」ところ、その帳簿は(会社法等に基づき)帳簿閉鎖のときから10年の保存が義務があり、しかも、(時効の起算点に関する考え方を適用して)最終の取引時点から10年の保存期間を認定しています。

つまり、少なくとも、最終取引日から10年間は、「全部の取引履歴の開示しろ!」と言えるわけです。



 ◆ 名古屋高裁金沢支部平成21年6月15日判決・判タ1310号157頁以下



被控訴人に取引履歴開示義務違反があり、その結果、控訴人が被控訴人の控訴人に対する貸付け(貸付年月日、貸付金額、弁済期、利息の約定を含む。)の事実を主張立証できない場合にまで、控訴人にその主張立証責任を負わせるのは、相当でない。そこで、このような場合には、控訴人は、被控訴人に対する不当利得返還請求の要件事実として、控訴人から被控訴人への金員の交付(弁済)のみを主張立証すれば足り、これを争う被控訴人において、抗弁として、この金員の交付(弁済)が法律上の原因に基づくこと、すなわち、被控訴人の控訴人に対する貸付け(貸付年月日、貸付金額、弁済期、利息の約定を含む。)及びこの貸付けに基づく弁済としてこの金員の交付が行われたことの主張立証責任を負うものと解するのが相当である。




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