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過払金トラブル                                 目次へ戻る


  自己破産免責後の過払金(返還)請求は、可能? 権利の濫用?
  



≪自己破産で免責を受けていても、大丈夫!≫


「自己破産による免責を受けていながら、過払金の返還請求って可能なの?」との疑問は、よく聞きます。

この点については、既に、裁判所で争われ、下級審の判例とはいえ、「原則として、破産免責は支障をきたさない(過払金請求ができる)」との結論で、一応の決着がついています。

なお、該当箇所を引用しておきますが、何らの予備知識もなく読むと分かりづらい点もあるので、読み飛ばして、ひとまず、結論だけ覚えておけば十分でしょう。


 ◆ 平成16年(ネ)第248号 仙台高裁平成17年5月25日判決(後掲参考文献付属CD収録)
   (原審・盛岡地方裁判所遠野支部平成14年(ワ)第18号)

(控訴人○○の請求が信義則に違反するかについて)


 被控訴人は、控訴人○○が破産免責を得た後に過払金の請求をするのは信義則に違反する旨主張する。

 しかし、新たな財産たる過払金債権が申告されなかったことにより不利益を被るのは破産者の一般債権者であって、過払金債権の債務者ではなく、同時破産廃止によって破産宣告と同時に破産手続が終了した以上、破産者は自己の有する財産処分権を失わないから、破産宣告時に財産の存在が判明していなかったしても、これを破産者が行使できないと解すべき法律上の根拠はない。また、免責を受けたこと自体によっては、過払金の返還義務は何ら影響を受けず、被控訴人において控訴人○○の行為を信頼した結果、被控訴人が何らの具体的な不利益を受けているものではなく、さらに、本件において、控訴人○○が、被控訴人に対する過払金及びその詳細を認識した上で、ことさらこれを隠匿して同時廃止を得たなどの事実は認められない。

 しかも、控訴人○○の破産手続は同時廃止により終了したものであるから、被控訴人の債権は確定されていない。

 したがって、被控訴人に対する過払金の返還請求が被控訴人との関係で信義則に反するとはいえず、被控訴人の主張は理由がない。




その他にも、後掲参考文献によれば、次の裁判例においても同旨の判断が出ているとのことです。

⇒ 東京高裁平成15年4月14日判決・法ニュース60号114頁
⇒ 東京地裁平成15年5月21日判決・法ニュース60号117頁
⇒ 岩内簡裁平成18年1月23日判決(平成17年(ハ)第53号:後掲参考文献付属CD収録)




≪裁判になっても、貸金業者が主張してこない限りは、黙っておく!≫


では、裁判になった場合、具体的に、どのように処理したらよいのでしょうか。


まず、消費者金融側が、何ら言及してこないケース。

この場合、過去に破産免責を受けていたとしも、消費者金融側から、「破産免責を受けていながら過払金請求をすることは権利の濫用であって許されない」との類の主張が出てきていないのなら、そのまま放置しておくのが無難です。

裁判所は、当事者が主張していない主張についてまで職権で争点を作りだして判断をくだすことはできない、との原則がありますので、あなたの側からわざわざ持ち出すのは、「やぶ蛇」とのひと言に尽きます。




≪貸金業者が主張してきた場合、反論はどうしたら?≫


次に、消費者金融側が、言及してきたケース。

この場合、とにもかくにも、反論をしておく必要があります。しかし、難しく考える必要はありません。あなたが資産隠しをしようとしていたわけではないこと、過払金は利息制限法に反する違法な収益であることなどを述べて、過払金の返還請求が権利の濫用ではないことを主張すれば良いのです。

具体的にどのように記載して良いのか分からない場合、「本件過払金の返還請求は権利の濫用ではない。同趣旨を述べたものとして、〜〜〜との裁判例も存するところである」と記載して先の4つの裁判例を引用しておけば、本人訴訟の場合ですから、(あなたの側によほど悪質な資産隠しなどがあると認定されるケースを除き)裁判所の方で上手くはからってくれることでしょう。

なお、消費者金融の側から更なる反論が出てきた場合、あなたまでやっきになって再反論する必要はありません。例えば、「○○付け書面において既に述べたように、原告の権利行使は権利濫用ではない」とでも簡単に触れておけば足りることでしょう。


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   (民事法研究会 2010年6月)

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