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過払金トラブル                                 目次へ戻る


  過払金の利息は何%で、いつ発生する?
  民法の条文をただ読むだけでは載っていません・・・???



≪利息は、年5%≫


過払金裁判では、(A)過払金そのものと、(B)過払金についての利息を請求するのがセオリーです。では、過払金の利息の計算方法、即ち、利率と、利息の起算点のルールはどのようになっているのでしょうか?


結論から言いますと、【利率が幾らになるか】については、利率は年5%です。この利率に関しては、消費者金融が「悪意の受益者」と認定されるか否かにかかわらず変わりません。従前は商事債権だとして6%が主張され、それが下級審の流れであったとも言われていますが、実務上は、最判平成19年02月13日民集61巻1号182頁において決着がつきました。

その一方で、【いつを起算日とするか】については、消費者金融が「悪意の受益者」と認定されるか否かにかかっています。即ち、「悪意の受益者」と認定されれば【過払金の発生日から】であり、認定されなければ【請求日(おおくは、訴訟の提起日)から】となり、事案によっては大きな違いとなって現れてきます。

このように互いの利益が衝突しますので、「悪意の受益者」であるか否かについては激しく争われることになる一因となっています。




≪悪意の受益者とは?≫


「悪意の受益者」という場合の「悪意」については、悪質な、悪意あるといったような人間性や道徳性に関わるものではありません。ある事柄を知っているか否かという意味での「知・不知」における「知っていること」ぐらいの意味ですので、注意してください。

従って、ここでは、“引き直し計算によって過払金が発生したことになるその当時、消費者金融がグレーゾーン金利が民事上は無効な契約で過払金になっていることを知っていたか否か、で「悪意の受益者」か否かが判定される”、というぐらいで把握しておけばよいでしょう。


なお、一般には、「悪意の受益者」はもう少し幅広く認定されるといわれています。

というのは、純粋に知不知だけで判定してしまうと、不勉強なほど不知であることになりやすく、つまり、不誠実な者ほど有利になり、正直者がバカをみることになってしまいます。その為、ここでの「悪意」には、「過失によって知らなかったこと」も含まれると解するのが通説・判例のようです。

そうすると、「悪意の受益者」の「悪意」については、結局、悪質な、悪意あるというような道義的な観点からその利得の受領を正当化し得ない場合、即ち、日常用語的な意味での「悪意」の意味に立ち戻っているのかもしれません。




≪民法のどこから読み解くの?≫


ところで、以上のようなことは民法のどこから読み解くのでしょうか。

まず、過払金の返還請求権というのは、専門的・法的にいうと、不当利得返還請求権というものになります。そして、この不当利得の返還請求権というものについては、民法703条以下で一般的な規律が定められています。

そこで、周辺条文を見てもらいたいのですが、「利息」が出てくる条文を探すと704条が目に留まります。

   (悪意の受益者の返還義務等)
   第七百四条  悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。
            この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。


しかし、読めば分かるのですが、この条文は「悪意の受益者」について「利息を付せ」と書いてあるに過ぎません。それに、利率についても書かれていません。

実は、その利率の考え方や「悪意の受益者」でない場合については、債権総則の部分に書いてあり、更には、それでもまだ不明瞭なものについては判例法によって補われていたりするのです。このように、全くの初心者には、マニュアル本に書いてあるような答えが素早く見つけ出せるような構造になっていないことに注意してください。


さて、過払金返還請求権の法的性質は不当利得返還請求権だと先に言いましたが、この不当利得返還請求権は「期限の定めのない債権」に分類されることについては、民法の債権編で学びます。この知識があれば、「期限の定めのない債権の履行期は、請求時である」(民法412条3項)との規定を介して、「悪意の受益でない場合の過払金債権の利息は、請求時から発生する」ということを導くことができます。

ちなみに、消費者金融が悪意の受益者でない場合、「たいていは提訴時から利息が発生する」と書きましたが、これは、「いつ請求したか」で争うことで訴訟の審理が無用に長引かないようにする為の実務の知恵です。

即ち、提訴に至る前に事前交渉があれば、ほとんど争いようのない日として「遅くとも提訴日」とか、より確実には「訴状副本送達日の翌日」などを選ぶわけです。


次に、利率ですが、これまた債権総則に規定があります。民事上の債権については、民法404条で5%だと規定されているわけです。



以上のような条文操作や民法の一般的な知識を習得していないながらも、真剣に「過払裁判を本人訴訟で」と考えているのであれば、後掲の『Q&A 過払金返還請求の手引』をお勧めします。

例えば、今回の利息計算の解説もズバリ結論や判例の所在を教えてくれるだけでなく、また、取引の金額を時系列にそって単純に入力していきさえすれば簡単に計算書が作成できるエクセルデータが付属されています。その付属ソフトについては、「多くの判決も別紙計算書として引用し、その信頼性は極めて高い」と誇れるものになっています。




【参考】

〆 最判平成19年02月13日民集61巻1号182頁
〆 「利息を請求する場合の訴状の記載上の注意点」については、別稿(下記コンテンツ収録)参照



 ◆ 民法の不当利得の規定



第四章 不当利得


(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条  悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

(債務の不存在を知ってした弁済)
第七百五条  債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。

(期限前の弁済)
第七百六条  債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。

(他人の債務の弁済)
第七百七条  債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。
2  前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。

(不法原因給付)
第七百八条  不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。



(履行期と履行遅滞)
第四百十二条  債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2  債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3  債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。



(法定利率)
第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。





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≪コンテンツ(電子書籍)の紹介≫


【収録コンテンツ一覧】

1章 悪意の受益(非債弁済)なので、不法行為?

2章 経営者の不法行為責任を追及する!

3章 「悪意の受益者」をめぐる攻防

付録1 利息請求における訴状記載上の注意点

付録2 訴状サンプル(過払金返還請求)









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