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過払金トラブル                                 目次へ戻る


  複数の消費者金融をまとめて訴える場合 管轄は?
  最決平成23年05月18日 平成23(許)4



≪簡裁、地裁?≫


複数の業者から借り入れをしていた場合、過払金もそれぞれの金融業者との間に発生します。債務整理の場面においては、これら複数の業者との債権債務関係を一括して清算しておくのが望ましいといえます。

このとき、各社からの借り入れが小額であり、それぞれに対する過払金が140万円に満たない場合、各社に対してそれぞれ別々に訴えると、簡易裁判所の管轄になります。140万円までの訴えは、地方裁判所ではなく、簡易裁判所が受け持つと法律が定めているからです。

では、合算すれば140万円を超えているとき、各社をあわせて訴えたならばどうなるのか?

この問題に答えたのが、標題の最決平成23年05月18日でした。




≪過払金返還請求訴訟では、併合すれば訴額は合算される≫


最高裁は、複数の消費者金融を併合して訴えるというような、ゆるい関連性の共同訴訟(判決文では、「法38条後段の共同訴訟」と定義)について、請求額を合算する民事訴訟法9条の規定の適用がある(厳密には、7条但書きによって適用が排除されない)と判断しました。

従って、複数の消費者金融に対して過払金の返還請求訴訟を提起しようとする場合、各社に対する請求額を合算して訴額を計算すればよいことになります。そうして、計算した金額が140万円を超えていれば地裁に、140万円までなら簡裁に訴えを提起することになります。

なお、大事な点として、合算できる業者は、同じ土地管轄にある業者までです。例えば、東京の業者と大阪の業者とを合算して訴額を算定できるかについては、本判決は必ずしも語っていませんので注意してください。




≪簡裁は、消費者金融の主戦場?≫


事案としては、複数の業者をまとめて140万円を超える金額にして地裁に訴えたケースにおいて、業者の側から、「地裁」から「簡裁」への移送を求めて争われた事件だったようです。下級審では、業者側の主張を認めて「簡裁」への移送を認めていたのですが、最高裁において逆転、結論的に、移送が却下されるに至っています。

このような問題が争われるのも、過払金裁判の特徴かもしれません。消費者金融側は、弁護士などに頼らずに従業員に裁判の遂行をさせるケースがままあり、その場合、「簡裁」が好まれるようです。「許可代理人」の制度があったりして、使い慣れているからだといわれます。また、以前は「支配人」選任を濫用して、代理人の資格を与える便宜的手法もあったそうですが、社会問題となって近年はなりをひそめているようです・・・。



なお、本件とは逆に、業者側が、複数の借り手に対してまとめて訴える場合についてのケースも、最決平成23年05月30日において最高裁が判断を示しています。



【参考】

〆 「他人とひっくるめて訴えられた場合  管轄は、簡裁?



 ◆ 最決平成23年05月18日 平成23(許)4



 法38条後段の共同訴訟であって,いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて,法7条ただし書により法9条の適用が排除されることはないというべきである。


 なぜなら,法7条は,法4条から法6条の2までを受けている文理及び条文が置かれた位置に照らし,土地管轄について規定するものであって事物管轄について規定するものではないことが明らかであり,また,法7条ただし書の趣旨は,法38条後段の共同訴訟において,一の請求の裁判籍によって他の請求についても土地管轄が認められると遠隔地での応訴を余儀なくされる他の請求の被告の不利益に配慮するものであると解されるのであり,簡易裁判所ではなく当該簡易裁判所を管轄区域内に置く地方裁判所において審理及び裁判を受けることにより被告が不利益を被ることがあり得るとしても,上記と同様の配慮を要するとはいえないからである。

 相手方は本件訴訟が法38条後段の共同訴訟に当たることを自認するところ,いずれの被告に係る部分も受訴裁判所である名古屋地方裁判所が
土地管轄権を有しているから,相手方に係る訴訟を含む本件訴訟は,訴訟の目的の価額が法9条1項本文により140万円を超えることになり,同裁判所の事物管轄に属するものというべきである。





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