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過払金トラブル                                 目次へ戻る


  悪意の受益(非債弁済)なので、不法行為? 【簡略版】
  最判平成21年09月04日 平成21(受)47



≪非債弁済と不法行為≫


近時、過払金の返還請求訴訟において、借主である原告が「不法行為に基づく損害賠償請求」を持ち出す場面が増えています。ネットで検索してみても、「不当利得の請求に疲れたら、不法行為請求」「時代はシフトしている」などというタイトルが転がっています。

実際、下級審の裁判例が出ていたことから、そこに何がしかのメリットを見つけてか、あるいは、よく分からないながらもマニュアルにそう書いてあるからというような理由からか、踊らされた非専門家(素人)さんも多かったのではないかと思います。


しかし、その後、最判平成21年09月04日が出るに至って、この法律論争は決着がつきました。

結論において、この最高裁判決により、研究者より、「現在の過払金返還請求訴訟において不法行為法が不当利得法の代替的機能を果たすことは期待できなくなった」と評されるに至っております。

要するに、原則として、不法行為請求で構成するのは無駄だ、ということです。




【参考】

〆 【会員】「予備的請求の書き方、書式は?」(本人訴訟編)参照



 ◆ 最判平成21年09月04日 平成21(受)47



4  そこで検討するに,一般に,貸金業者が,借主に対し貸金の支払を請求し,借主から弁済を受ける行為それ自体は,当該貸金債権が存在しないと事後的に判断されたことや,長期間にわたり制限超過部分を含む弁済を受けたことにより結果的に過払金が多額となったことのみをもって直ちに不法行為を構成するということはできず,これが不法行為を構成するのは,上記請求ないし受領が暴行,脅迫等を伴うものであったり,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたりしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解される。この理は,当該貸金業者が過払金の受領につき,民法704条所定の悪意の受益者であると推定される場合においても異なるところはない。

  本件において,被上告人の上告人に対する貸金の支払請求ないし上告人からの弁済金の受領が,暴行,脅迫等を伴うものであったことはうかがわれず,また,第1取引に基づき過払金が発生した当時,貸金業法43条1項(平成18年法律第115号による改正前のもの)により,制限超過部分についても一定の要件の下にこれを有効な利息債務の弁済とみなすものとされており,しかも,その適用要件の解釈につき下級審裁判例の見解は分かれていて,当審の判断も示されていなかったことは当裁判所に顕著であって,このことからすると,被上告人が,上記過払金の発生以後,貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのにあえてその請求をしたということもできず,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠くものであったとはいえない。
  したがって,被上告人が民法704条所定の悪意の受益者であると推定されるとしても,被上告人が過払金を受領し続けた行為は不法行為を構成するものではない。

  原審の前記判断は,これと同旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。





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この記事の【詳細版】を収録しています。


【収録コンテンツ一覧】

1章 悪意の受益(非債弁済)なので、不法行為?

2章 経営者の不法行為責任を追及する!

3章 「悪意の受益者」をめぐる攻防

付録1 利息請求における訴状記載上の注意点

付録2 訴状サンプル(過払金返還請求)












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