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[【請求の原因】の記載方法]
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前回は、【請求の趣旨】の記載方法を説明しました。
請求の趣旨は、それぞれの事案ごとに定型文を選択する必要があるとの点を除けば、マニュアル本などの記載が参考になります。
これに対して、【B請求の原因】については、マニュアル本の記載例は、初めて訴状を書こうとするような人には役立ちません。
それもそのはず、請求の原因には、個別の事案に応じて書く必要があるからです。勿論、本当に書いておかなければならない部分(法律要件)は共通しています。しかし、実際には、そこに事情を書き加えて記載するのが普通です。その結果、両者の区別がつかない人には、他人の文例を見ていても、ピンと来ないのではないでしょうか。
そこで、今回は、【請求原因】というものが、建て前上は、どのようなものであるべきかについて、まず見ていくことにしましょう。
≪「請求原因」は、どのように書くべきか?≫
請求原因とは、読んで字のごとく、主張(請求)を理由づける原因のことです。
そのことから、専門的な学習をしたことのない人には、まるで井戸端会議をするかのように、経緯を全部書いてしまう傾向があります。
しかし、裁判をする上で「請求の原因」というときは、もっと狭い意味で使われているのです。
それは、法律効果を発生させる上で要件となっている法律要件事実のことを言っているのです。平たく言えば、例えば、お金を返す義務を発生させる上で法律上要件とされている事実、それのみを指しているのです。
では、法律上要件とされている事実は、どこに書いてあるのかといえば、一般には、民法に書いてあります。しかし、ストレートな記載となっていないのが難点です。というのも、契約の効力発生の要件という形で記載されているからです。
従って、「契約の効力発生」の事実+「契約違反(不履行)の事実」を書くことで、請求原因は構成されることになります。
それでは、具体的に見てみましょう。
例えば、原告が被告に、1000万円を貸して、返せとの請求をする場合。
(要件1)【効力発生要件】 お金の返還の合意 :契約の内容ですね
(要件2)【効力発生要件】 お金の交付 :お金を実際に相手に渡したこと。
(要件3)【不履行の事実】 期日の到来 :これは、読んで字の如く。
以上のことを書けば、請求原因としては足りるのです。従って、例えば、
+++++++++++
平成XX年XX月XX日に、原告Aは、被告Bに、12月1日を期日として金1000万円を貸し渡した。
その期日は、既に到来したが、被告Bは、未だに返還しない。
よって、原告は、被告に金1000万円の支払を求める。
(※ 但し、利息等の請求がない場合の記載です。)
+++++++++++
と記載すれば、請求原因としては必要にして十分なのです。
(記載例:訴状サンプル)
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訴 状
平成XX年XX月XX日
大阪地方裁判所 御中
原告 碇 烈蔵
当事者の表示
〒000−0000(送達場所)
大阪府XXXXXX
TEL 1234−56−7890
原告 碇 烈蔵
〒000−0000
大阪府XXXXXX
TEL 1234−56−7890
被告 柳 流輔
貸金返還請求事件
訴額 1000万円
予納郵券 (※書記官に聞いてから記載した方が良いでしょう。)
請求の趣旨
被告は、原告に対して、金1000万円を支払え
訴訟費用は、被告の負担とする
との判決並びに仮執行宣言を求める。
請求の原因
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平成XX年XX月XX日に、原告碇烈蔵は、被告柳流輔に、12月1日を期日として金1000万円を貸し渡した。
その期日は、既に到来したが、被告柳は、未だに返還しない。
よって、原告は、被告に金1000万円の支払を求める。
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