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Lawschool 趣味の法律セミナー
[内容証明から、訴状への転用]
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専門家に依頼するに値する内容証明とは、何か?
いわゆる良質な内容証明の業務依頼について考える為に、以下、東京地裁判決平成20年3月28日判例タイムズ1276号323頁以下をサンプルにして、内容証明のレベルのものと、訴状のレベルとを見比べてみましょう。
なお、事案を単純化していますし、あくまでも、以下の文章は判決文に顕われたものから推察したものです。
【クーリングオフの為の内容証明文書】
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宛名等(略)
私は、平成16年2月ころ、千代田区紀尾井町所在の「ホテルニューオータニ」において、御社から、袋帯を代金25万円で購入し、分割手数料5万円を加算した合計30万円につき、御社に対する売買契約書を兼ねた、サクラクレジットに対するクレジット申込書にサインしました。
しかしながら、本書面をもって、かかる契約を解除(クーリングオフ)させていただきます。つきましては、商品代金等30万円全額の返還及び、支払済みまで遅延損害金として年6分の金員を請求いたします。
また、商品につきましても、御社の負担にてお引取りお願いいたします。
なお、来月末(平成18年7月末日)までにお引取り願えない場合は、当方にて処分(廃棄も含む)させていただくことに異議なきものとみなします。
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【訴状】
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訴 状
宛名等(略)
【請求の趣旨】
1 被告株式会社ドレスアップは、原告に対し、金30万円及び、
これに対する平成18年6月13日から支払済みまで年6分の割合
による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との裁判並びに仮執行宣言を求める。
【請求の原因】
第1 当事者について
1 原告は、・・・(中略)、別段収入もない。
2 被告は、・・・(中略)、着物等の販売をする株式会社である。
3 訴外サクラクレジットは、・・・(略)。
第2 本件売買契約及び解除の経緯
1 原告は、平成16年2月ころ、千代田区紀尾井町所在の「ホテルニューオータニ」において、被告から、袋帯を代金25万円で購入(以下、本件契約)し、分割手数料5万円を加算した合計30万円につき、被告に対する売買契約書を兼ねた、サクラクレジットに対するクレジット契約申込書(以下、本件契約書)に署名押印した。
2 その後、原告は、平成18年6月12日頃に到達した内容証明郵便をもって、本件契約を解除する旨の意思表示(クーリングオフ)をした(甲2)。
第3 クーリングオフが有効であることについて
1 本件契約書には、法人である販売業者の代表者氏名、売買契約の締結を担当した者の氏名、売買契約の締結の年月日の記載がない(甲3)。
2 ところで、特定商取引法(以下、法)5条1項は、販売業者は、営業所以外の場所において、指定商品につき、売買契約を締結したときは、遅滞なく経済産業省令で定めるところにより、売買契約の内容を明らかにする書面を購入者に交付しなければならないとし、これを受けた施行令4条は、その記載内容として、@販売業者の氏名または名称、住所及び電話番号、並びに法人にあっては代表者氏名、A売買契約の締結を担当した者の氏名、B売買契約締結の年月日、C商品名及び商品の商標または製造者名、D商品の数量等を定めている。
そして、法9条は、かかる法5条の書面を受領した日より起算して8日を経過する以前においては、購入者は締結した売買契約を無条件で解除(クーリングオフ)することができる旨定めている。
3 然るに、本件契約において、原告に交付された本件売買契約書は、上記@ないしDのいずれかの記載を欠いている。なおかつ、本件契約の締結場所は、いずれも法5条の「営業所」に該当しない。
4 従って、原告のクーリングオフの意思表示は有効と言うべきである。
第4 結論
よって、被告は、原告に対し金30万円及び、これに対する平成18年6月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(改ページ)++++++++++++
【証拠方法】
甲1 ・・・
甲2 内容証明郵便
甲3 本件売買契約書
甲4 原告の陳述書
・・・・・・・以下略
【添付書類】
1 甲号証 各一通
2 ・・・・・・・以下略
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上記において、大きく異なっている内容といえば、それは、訴状の第3「クーリングオフが有効であることについて」の部分です。
しかし、クーリングオフの通知において、かかる記載をしてはならない、という理由はありません。ただ、クーリングオフの期間制限が短期である為、実際問題としては、上記サンプルのような素っ気ないものを10分ほどで作成し、その場で郵送手続きを行う、ということになるのではないでしょうか。
しかし、以上は、あくまでもクーリングオフに絡めた内容証明文書の作成の話です。内容証明は、何も、クーリングオフの為だけにあるのではありません。そこで、相手方に自分の意思を告げ、催告するような場合には、結局、訴状と比べても、裁判所に対する申立てであるかの点で違いがあるだけで、殆ど同様の機能を果たす文書となってきます。
以下、そのような文書をサンプル例に従って記載してみましょう。
【催告書】
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宛名等(略)
第1 本件売買契約と解除の経緯について
1 私は、平成16年2月ころ、千代田区紀尾井町所在の「ホテルニューオータニ」において、御社から、袋帯を代金25万円で購入(以下、本件契約)し、分割手数料5万円を加算した合計30万円につき、御社に対する売買契約書を兼ねた、サクラクレジットに対するクレジット契約申込書(以下、本件契約書)に署名押印しました。
2 その後、私は、平成18年6月12日頃に到達した内容証明郵便をもって、本件契約を解除する旨の意思表示(クーリングオフ)をしております。
第2 クーリングオフが有効であることについて
1 本件契約書には、法人である販売業者の代表者氏名、売買契約の締結を担当した者の氏名、売買契約の締結の年月日の記載がありません。
2 ところで、特定商取引法(以下、法)5条1項は、販売業者は、営業所以外の場所において、指定商品につき、売買契約を締結したときは、遅滞なく経済産業省令で定めるところにより、売買契約の内容を明らかにする書面を購入者に交付しなければならないとし、これを受けた施行令4条は、その記載内容として、@販売業者の氏名または名称、住所及び電話番号、並びに法人にあっては代表者氏名、A売買契約の締結を担当した者の氏名、B売買契約締結の年月日、C商品名及び商品の商標または製造者名、D商品の数量等を定めております。
そして、法9条は、かかる法5条の書面を受領した日より起算して8日を経過する以前においては、購入者は締結した売買契約を無条件で解除(クーリングオフ)することができる旨定めております。
3 然るに、本件契約において、原告に交付された本件売買契約書は、上記@ないしDのいずれかの記載を欠いております。なおかつ、本件契約の締結場所は、いずれも法5条の「営業所」に該当しません。
4 従って、当方のクーリングオフの意思表示は有効であり、早急に、代金30万円等の返還をお願い致します。
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さて、上記サンプル「催告書」と「訴状」とが、どのように違うのかを見比べれば、多言を要せずして、転用の方法が分かると思います。
「私」が「原告」となり、「御社」が「被告」となっていること、
「当事者について」として、各当事者についての説明部分が入っていること、
「請求の趣旨」と「請求の原因」という形式的な記載部分を設けること、
最後の部分で、「結論」として、「よって〜〜」というような書き方になっていること、
その他、証拠の標目や添付書類の記載が加わっていることなどでしょうか。このように、訴状の提出までならば、ほぼ、法律専門職が作成する内容証明で十分に対応が可能です。むしろ、その水準のものを要求してこその業務依頼だと心得てください。
なお、今回取り上げたサンプル事案では、その後、原告側から、消費者契約法による取消しの主張が追加されています。
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>> 専門家でない普通のあなたが裁判をするには? そのノウハウを解説
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§お勧め資料§
● 『法務担当者のための
民事訴訟対応マニュアル』
田路 至弘 編著
(商事法務 2005年10月)
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訴訟の専門的な知識についても、本人訴訟をする上で必要な分量で解説されており、下手に学問書を齧るより、平易で分かりやすく素人向きの良書だと思います。
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民事訴訟の書式を中心にした実務本。実際に訴訟に参加するならば、書式は知っておくに越したことはありません。手続きの流れに沿って、実務の観点から必要となる解説が付されていますので、本人訴訟を考えるならば、訴訟の手続き面に関しては必須の一冊かと。
勿論、書面の内容をいかに書いていくかについては、実体法などの別のテキストでの勉強が必要となります。
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