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[【請求の原因】の実務的な記載方法]
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前回は、請求原因の基本的な記載方法を説明しました。
サンプル記載としては、次のようなものです。
(「貸金の返還請求」のケース)+++++++++++
平成XX年XX月XX日に、原告Aは、被告Bに、12月1日を期日として金1000万円を貸し渡した。
その期日は、既に到来したが、被告Bは、未だに返還しない。
よって、原告は、被告に金1000万円の支払を求める。
+++++++++++
≪でも、実際は?≫
しかし、実際には、このような簡素な記載のみで訴状を作成するケースは少ないと言えます。
やはり、なぜお金を貸すに至ったのか等の周辺事情を、適度に記載していきます。この時、思い出して欲しいのが、前回、「本当に書いておかなければならない部分(法律要件)」と、事情とを区別した理由です。それは、あくまでも、記載が必須である部分を見抜く為の訓練として、法律要件だけで構成した請求原因を提示したのでした。
従って、請求原因として必須のものを書き漏らさないように注意しつつ、後は、皆さんが思うように事件の経緯を説明していけばよいのです。
この点を踏まえて、先のサンプルを補充してみましょう。
(「貸金の返還請求」のケース・修正版)+++++++++++
平成XX年XX月△△日に、被告Bが、会社の運転資金に困っており、どうしても融資して欲しいと言ってきた。当初、原告Aとしても、お金にそれほど余裕があったわけでもなく、断った。
しかし、被告Bの会社は原告Aの大口の取引先の一つであり、これが倒産すると大変なので、やむなく貸し付けることにした。
その後の、平成XX年XX月XX日、原告Aは、自己の事務所において、被告Bに、12月1日を期日として金1000万円を貸し渡した。その期日は、既に到来したが、被告Bは、未だに返還しない。先日、12月10日にも請求したが、被告Bは支払わない。
よって、原告は、被告に金1000万円の支払を求める。
+++++++++++
実際の事案では、より詳細な事情を記載することになるでしょう。
ポイントを繰り返しておけば、書くべき法律要件を漏らさないこと。それさえ守れば、後は、皆さんが書きたいように書けばよい、ということです。
さて、これで、【B請求原因】の記載方法も説明しましたので、残るは、【C請求を理由づける事実】だけです。しかし、実を言うと、その説明は、もはや不要です。なぜならば、【C請求を理由づける事実】とは、今まで「事情」という形で説明してきたものを指しているからです。
つまり、「請求原因」の大括りの中に、【C請求を理由づける事実】も記載してしまうのです。その上で、狭い意味での請求原因、即ち、法律要件と、事情とは、できる限り分けて、その見分けがつけやすいように記載して欲しい、というのが、最高裁判所の規則の趣旨なのです。
従って、後は、一般の文章を記載するときと同様に、工夫次第です。例えば、狭い意味の請求原因(法律要件)を主体として簡潔な記載部分を最初に書き、その後、「事案の概要」などと表題を付け直して、事情について縷々述べたりなど。
要するに、必須記載事項さえ書いておけば良く、訴状に限らず裁判書類は、スタイルフリーなのです!
(記載例:訴状サンプル)
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訴 状
平成XX年XX月XX日
大阪地方裁判所 御中
原告 碇 烈蔵
当事者の表示
〒000−0000(送達場所)
大阪府XXXXXX
TEL 1234−56−7890
原告 碇 烈蔵
〒000−0000
大阪府XXXXXX
TEL 1234−56−7890
被告 柳 流輔
貸金返還請求事件
訴額 1000万円
予納郵券 (※書記官に聞いてから記載した方が良いでしょう。)
請求の趣旨
被告は、原告に対して、金1000万円を支払え
訴訟費用は、被告の負担とする
との判決並びに仮執行宣言を求める。
請求の原因
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平成XX年XX月△△日に、被告柳流輔が、会社の運転資金に困っており、どうしても融資して欲しいと言ってきた。当初、原告碇烈蔵としても、お金にそれほど余裕があったわけでもなく、断った。
しかし、被告の会社は原告の大口の取引先の一つであり、これが倒産すると大変なので、やむなく貸し付けることにした。
その後、平成XX年XX月XX日、原告は、自己の事務所において、被告に、12月1日を期日として金1000万円を貸し渡した。その期日は、既に到来したが、被告は、未だに返還しない。先日、12月10日にも請求したが、被告は支払わない。
よって、原告は、被告に金1000万円の支払を求める。
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