拍手で応援
お願いします♪







Lawschool
 趣味の法律セミナー
目次へ戻る


  [訴状を書く上での4つのポイント]


6回にわたって、訴状を書く上での決まりごとのようなものを説明してきました。

個人的には、なぜ、マニュアル本は裁判所の雛形に記入するタイプの解説しかしないのか、という疑問がありましたので、実践的な起案方法を紹介しました。


ポイントは、
  @ 下手に雛形を用いるより、パソコンを用いて起案する方が、簡単。
  A その場合、必須の記載事項は、当事者、請求の趣旨、請求の原因の、3つ。
  B 請求の趣旨は、判決の結論だけを書く、という意識で、簡潔に。
  C 請求原因は、法律要件を落とさなければ、後はフリースタイル!

こんなところでしょうか。




≪余談≫

さて、最後に、個人的な意見になりますが、ざっくばらんな話をしておきます。


まず、「訴訟と司法書士」について。

これを問題としてあげたのは、近年、司法書士に簡易裁判所の訴訟代理権が付与され、弁護士のような活動を一部でするようになったからです。

勿論、司法書士も択一試験とはいえ民事法の勉強をつんでおりますので、素人ではありません。しかし、気にかかることがあります。

第一に、簡裁代理権のみということから、不思議な訴訟が起きるようになったのです。それは、本来ならもっと高額の請求が可能な事案であるにもかかわらず、なぜか、「訴額140万円である」という事件です。

これは、簡易裁判所の管轄権が訴額にして140万円までしかないことから生じる問題です。

つまり、司法書士が事件を受任したいことから、無理に、140万円の請求に値切ってしまった、という事件です。

このような場合、少なくとも、「一部請求」という形式を取っていてくれれば、その後に、残部の請求は可能になるのですが、そのような訴訟法上の注意を怠ると、初回の訴訟で全面勝訴をしても、本来の債権が300万円であったという場合、残部の160万円については、もはや、既判力という裁判の効力によって請求できなくなってしまいます。

従って、皆さんが、140万円以上の請求をしたいと思っているような事案では、司法書士に相談に行くと、知らず知らずに困ったことになっている可能性があります。よって、少なくとも、100万円は請求したいという腹積もりの場合には、弁護士に相談にいってください。


そうすると、司法書士に訴訟の相談に行くには、100万円前後までとなりますが、果たして、その程度の訴訟に、代理人をつける必要があるのかは、ひとつの問題となります。勿論、普通のサラリーマン世帯にとって、100万円は大きな金額です。しかし、訴訟のプロである弁護士が本腰を入れるようなケースというのは、もう少し桁が大きな事案です。

従って、自ずとこの規模の訴訟では、本人訴訟でも事足りるようなケースが多いのではないかと感じるのです。


まして、司法書士の本業は登記業務です。

民事法の分野では、比較的、会社法務には強いですが、それも、会社に関連した権利義務を争う場面というよりも、事務的に、取締役の変更があった場合の処理とか、株主総会の議事録の指導など、手続的な場面についてです。

多様な民事紛争の法的知識については、案外、皆さんが書店で本気で調べてみれば、司法書士と同等の水準にまで達することができるのではないでしょうか。なぜならば、司法書士の本業は登記業務であり、そちらに労力を、よりかけるべきであって、いたずらに民事法の分野を深く時間をかけて勉強するのは、必ずしも利口ではないからです。



というわけで・・・、ではないですが、100万円前後の事案であれば、むしろ、行政書士に相談を持ちかけてみるのも一つので手だと思います。

なぜならば、行政書士には訴訟代理権がなく、訴額にまつわる問題について心配する必要がないからです。本当に、紛争が顕在化してきたならば、弁護士への相談を勧めるでしょうし、結論においては、それが相談者の利益になるのではないかと思います。

但し、行政書士は行政書士で、やたらと内容証明を送るように勧める場合は、ご注意です。

相談者さんが、本当に訴訟も覚悟しているならば、わざわざ、相手にその予告をしてやる必要はありません。必要な予告はするが、それ以外はせず、淡々と証拠を集めてサプライズで訴訟を仕掛ける、これが本来の採るべき道のように思います。

例えば、相談者は、単に、相手に意見を言いたいのではなく、その主張が正しいことを証明したいはずです。勿論、訴訟の結果を保証できる者などはおりません。しかし、不用意な通知は相手に準備を促すことになります。

従って、紛争の展開を見越すならば、「法律的に意味のある通知をなす」、この観点から何事も為すべきなのです。

例えば、クーリングオフならば期限が短く、通知そのものに意味があるので、通知をしたことを証拠として残しておく必要がある、とか。未払賃金の時効は2年と短いので(労基法115条)、早急に対処しておく必要がある、とか。

よって、当該内容証明で相手に通知をするその必要性を合理的に説明できないならば、若干、その行政書士には警戒した方が良いと思います。













 ● 訴訟の初歩  始まりは、訴状から
   1 “裁判に対する心構えと、訴状の基礎”
   2 “最高裁の雛形は、あくまでテンプレート”
   3 “表題部分の記載方法”
   4 “【請求の趣旨】の記載方法”
   5 “【請求の原因】の記載方法”
   6 “【請求の原因】の実務的な記載方法”
   7 “訴状を書く上での4つのポイント”

   〆 日弁連の訴状等のサンプル(日弁連)
    自分で訴状をワープロ作成する場合には、
    最高裁のヒナより、サンプルとして適しています。


 ● 訴訟の前段階  内容証明の利用方法
   8 “クーリングオフの概要(特定商取引法の場合)”
   9 “内容証明の利用法”

 ● 小額訴訟と支払督促
   10 “小額訴訟と支払督促、その選択は?”
   11 “内容証明から、訴状への転用”

   〆 小額訴訟の訴状サンプル、書き方

 ● 訴訟費用
   12 “弁護士費用は、訴訟費用?”


細目次へ戻る

目次Pageへ


目    次

LawSchool  編
 〆 訴 状編
 【訴状】の書き方などの解説。

 〆 答弁書編
 【答弁書】、【準備書面】などの解説。


◆ 本人訴訟編
本人訴訟をする上での初歩的な心構え。


◆ ネットトラブル編<
ネットにかかわる各種トラブルの各論。





  葵の本人訴訟セミナー 受講生募集中!今すぐ、Click!
  >> 専門家でない普通のあなたが裁判をするには? そのノウハウを解説












HOMEへ


    




§お勧め資料§



● 『法務担当者のための
  民事訴訟対応マニュアル』
  田路 至弘  編著
  (商事法務 2005年10月)

訴状の作成をはじめ、裁判のテクニック全般について学びたいのなら、この本。書式のサンプル、具体例も要所において掲載されて重宝します。

訴訟の専門的な知識についても、本人訴訟をする上で必要な分量で解説されており、下手に学問書を齧るより、平易で分かりやすく素人向きの良書だと思います。

本書の最大の特徴は、企業の法務向けの本を謳っているように、類書にはない、ちょこちょこっとした訴訟戦術のような豆知識が盛り込まれていることです。過大な期待はすべきではありませんが、弁護士と接点をもたずに訴訟をする場合、こういった走り書きのようなメモでも大いに参考になるのではないでしょうか。






● 『書式 民事訴訟の実務』

民事訴訟の書式を中心にした実務本。実際に訴訟に参加するならば、書式は知っておくに越したことはありません。手続きの流れに沿って、実務の観点から必要となる解説が付されていますので、本人訴訟を考えるならば、訴訟の手続き面に関しては必須の一冊かと。

勿論、書面の内容をいかに書いていくかについては、実体法などの別のテキストでの勉強が必要となります。





ホームへ