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過払金トラブル                                 目次へ戻る


  消費者金融が倒産したら、過払金(返還)はどうなるの?
  債権届出期間後のケース (平成21年12月4日最高裁判決)



≪消費者金融が倒産したら?≫


消費者金融が倒産し、その法的倒産手続きが済んだ後(債権届出期間後)、思い立ったようにして過払金返還請求をしても無駄である、と判断した最高裁の判例が次のものです。

平成22年判決は、平成21年判決を援用し、事例の積み重ねをしたものですから、平成21年判決を見ておけばその法理を把握できるでしょう。その際注意すべき点として、「更生計画認可決定後に発生する過払金」については別論であることに気をつけてください。

なお、倒産手続きがまだ続いている場合、別稿「債権届出内のケース」を参照。



【参考】

〆 最判平成22年06月04日 平成20(受)2114事件   判決(PDF)
  ⇒原審・大阪高判平成20年9月25日(公刊物未登載)
  ⇒一審・神戸地判平成20年2月13日判時2002号132ページ

〆 最判平成21年12月04日 平成21(受)319事件   判決(PDF)
  ⇒原審・大阪高判平成平成20年11月20日金判1333号32ページ
  ⇒一審・京都地裁平成20年6月5日金判1333号35ページ

〆 評釈として、内藤満「過払金債権と債権手続」NBL881号6ページ
〆 従前の法的主張・法律構成については、平成21年判決の判タ1323号囲み解説がお勧め
〆 もう一歩前へ、別稿「更生債権届出がなされなかった過払金返還請求権」を参照。



 ◆ 最判平成21年12月04日判決 平成21(受)319事件

(届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権について)


4(1) 前記事実関係によれば,管財人等は,本件更生手続において,顧客に対し,過払金返還請求権が発生している可能性があることや,更生債権の届出をしないと被上告人が当該更生債権につきその責めを免れることにつき注意を促すような措置を特に講じなかったというのである。

 しかし,更生計画認可の決定があったときは,更生計画の定め又は法律の規定によって認められた権利を除き,更生会社がすべての更生債権につきその責めを免れるということ(以下「失権」という。)は,更生手続の根本原則であり,平成14年法律第154号による改正前の会社更生法(以下「旧会社更生法」という。)においては,更生会社の側において,届出がされていない更生債権があることを知っていた場合であっても,法律の規定によって認められた権利を除き,当該更生債権は失権するものとされており,また,更生債権者の側において,その責めに帰することができない事由により届出期間内に届出をすることができず,追完もできなかった更生債権についても,当然に失権するものとされていた。以上のような旧会社更生法の規定の内容等に照らすと,同法は,届出のない更生債権につき失権の例外を認めることが,更生計画に従った会社の再建に重大な影響を与えるものであることから,更生計画に定めのない債権についての失権効を確実なものとして,更生手続につき迅速かつ画一的な処理をすべきこととしたということができる。

 そうすると,管財人等が,被上告人の顧客の中には,過払金返還請求権を有する者が多数いる可能性があることを認識し,あるいは容易に認識することができたか否かにかかわらず,本件更生手続において,顧客に対し,過払金返還請求権が発生している可能性があることや更生債権の届出をしないと失権することにつき注意を促すような措置を特に講じなかったからといって,被上告人による更生債権が失権したとの主張が許されないとすることは,旧会社更生法の予定するところではなく,これらの事情が存在したことをもって,被上告人による同主張が信義則に反するとか,権利の濫用に当たるということはできないというべきである。そして,このことは,過払金返還請求権の発生についての上告人らの認識如何によって左右されるものではない。


(2) 前記事実関係によれば,被上告人の保全管理人は,新聞紙上に「ライフカードは,これまで通りお使いいただけます。」という見出しで本件社告を掲載し,従前どおりの取引を継続するよう求めたというのであるが,本件社告は,カード会員の脱会を防止して会社再建を円滑に進めることを目的として行われたものであって,その目的が不当であったとはいえず,その内容も,顧客に対し更生債権の届出をしなくても失権することがないとの誤解を与えるようなものではなく,その届出を妨げるようなものであったと評価することもできない。そうすると,本件社告が掲載されたからといって,被上告人による失権の主張が信義則に反し,権利の濫用に当たるということはできない。


(3) さらに,前記事実関係によれば,約定利率により計算をした元利金の残債権額をもって顧客との間の金銭消費貸借取引を管理していた被上告人が,これを前提としてその評価がされた営業資産をもって,資金を調達することができたことや,過払金返還請求権を更生債権として届出する者がわずかであったということが,会社の早期再建に寄与したということはできるものの,このような事情があったからといって,上記の判断が左右されるものでもない。

 そして,他に,被上告人による失権の主張が,信義則に反し,権利の濫用に当たると認められるような事情も見当たらない。


(4) 以上によれば,被上告人において,上告人らの過払金返還請求権が失権したと主張することが,信義則に反するとも,権利の濫用であるともいえない。




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