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  [原発損害裁判で、本人訴訟は可能か?](2012年01月08日,02月28改稿)
  「中間指針は、“切り捨て基準”か?」(第8回)


≪和解の成立率、1%未満≫


「原発賠償、遠い和解…747件中まだ成立3件」との記事が踊ったのは、つい先日のことでした。それから数日して、今度はNHKから、東京電力(東電)が、紛争解決センターの和解案に関して、将来の損害について請求の余地を残すような条件を拒否したらしいとの報道がされていました。

これまで7回にわたって専門誌の記事などを紹介し法律的なお話しをしてきましたが、今回は、紛争解決センターの具体的な活動の結果が、ニュースとしてちらほらと見え隠れしてきましたので、それら現状を眺めてみたいと思います。



◆ 「原発賠償、遠い和解…747件中まだ成立3件」 読売新聞 2012年1月31日03時01分
(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120131-OYT1T00098.htm)


 東京電力福島第一原発事故の賠償問題を巡り、政府の原子力損害賠償紛争解決センターの活動が正念場を迎えている。

 業務開始から約5か月たつが、30日までに和解にこぎ着けたのは申し立てのあった747件のうちまだ3件。センターは今後、争点になりやすいポイントごとに賠償基準を順次公表する方針で、「基準がはっきりしてくれば、当事者間の直接交渉も進むはず」としている。



 ◆ 「原発の損害賠償で東電を批判」 NHK 2月3日 20時50分 
(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120203/t10015770961000.html)


 原発事故の損害賠償を巡り、追加の賠償請求もできるとした国の紛争解決センターの和解案の一部を東京電力が拒否したことに対し、福島県弁護士会の会長が会見し、「重大な問題だ」と述べて、東京電力の対応を批判しました。


 国の原子力損害賠償紛争解決センターは福島県
大熊町の男性の申し立てを受け、東京電力が原発事故で住めなくなった住宅の損害賠償として、1300万円余りの支払いとともに追加の請求もできるとした和解案を示しました。これに対し、東京電力は賠償額は支払うものの追加の請求には応じられないと和解案の一部を拒否しました。

 これについて、福島県弁護士会の菅野昭弘会長が福島市で会見し、「和解案の重要な部分を拒絶したもので、重大な問題だ」と述べ、東京電力の姿勢を厳しく批判しました。そのうえで、国に対して「和解案に拘束力を持たせることも含め、被害者が迅速に救済される施策を早急に検討するよう求める」という声明を発表しました。菅野会長は「東京電力が和解案を受け入れなかったことで賠償の和解手続きがますます進まなくなり、非常に問題だ。そもそも紛争解決センターが機能していない」と話しています。



(※ ネット閲覧の便宜の為、適宜改行等を加えた。)




少し検索してみると、大熊町に関連したケースでは、次の通り。


【大熊町】

⇒ 「東電、原発事故で初の住宅賠償 和解案受け入れ」(47NEWS:2012/01/26 22:00 【共同通信】)
   (http://www.47news.jp/CN/201201/CN2012012601001244.html)

   * 原発事故で住めなくなった福島県大熊町の住宅の損害について。
   * 東京電力が政府の「原子力損害賠償紛争解決センター」の和解案を受け入れ、
      約1300万円の賠償を支払うと発表した。


⇒ 「県弁護士会 和解案を拒否した東電に抗議」(日テレNEWS24: 2/3 19:45 福島中央テレビ)
   (http://news24.jp/nnn/news8653108.html)

   * 大熊町の住民が避難費用や慰謝料など。
   * 東京電力が「中間指針で示された金額を
超える慰謝料の増額や、仮払い補償金は清算は
      しない
」と拒んだ。


⇒ 「和解案尊重を東電に要請 福島県弁護士会が声明」(河北新報:2012年02月04日土曜日)
   (http://www.kahoku.co.jp/news/2012/02/20120204t63009.htm)

   * 同県大熊町の男性が約4000万円の損害賠償を東電に請求。
   * 東電は1月26日、請求額が国の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針の示した賠償基準
      を上回ると判断。センターの和解案も拒否し、約2200万円に限って支払い、
超える分は賠償
      しない
と回答した。
   * 東電は「回答後の審議で、和解案の96%の賠償を受け入れることを示した。和解が成立する
      よう努力する」としている。



【双葉町】

⇒ 「東電、慰謝料増額拒否 福島・双葉町が抗議」(河北新報:2012年01月30日月曜日)
   (http://www.kahoku.co.jp/news/2012/01/20120130t61011.htm)

   * 大熊町の夫婦が昨年9月、計約4千万円の賠償を求めた案件。
   * 和解案に対し、東電は今年1月26日、住宅損害分を認めて計約2200万円を支払うとしたが、
      慰謝料増額は拒否。
   * 町弁護団は、精神的損害を月額35万円へ引き上げるなど独自の賠償を要求。


⇒ 「『東京電力が和解案拒否』 双葉町長、抗議の声明」(読売新聞:2012年1月30日07時49分)
   (http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120129-OYT1T00509.htm)

   * 家屋損害に約2600万円の支払いを求めた案件。
   * 不動産として初めて、約1300万円の支払いを盛り込んだセンターの和解案。
   * 東電は家屋の賠償を受け入れる方針を示したが、
追加請求には一切応じないとの条件を付けるなどした。




≪初の住宅賠償事案≫


その後、2月27日に各社より報道されたところによると、東電が、自社基準を超える和解案を受け入れることになったそうです。ただ、記事からは必ずも判然としませんが、国の中間指針を越える賠償を認めたのかは分かりづらい報道になっています。

従前の東電の姿勢があわせてみてとれますので、参考までに引用しておきます。



【概要】

⇒ 「住宅賠償・慰謝料増額応じる=東電、基準超え初の受諾−避難住民と和解成立」(2012/02/27-21:47)
  (http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2012022700791&j4)

    東京電力福島第1原発事故の賠償をめぐり、福島県大熊町から避難した住民の申し立てを受け、
   国の原子力損害賠償紛争解決センターが示した住宅賠償や慰謝料の増額などを含む和解案に
   ついて、東電は27日、センターの東京事務所で開かれた口頭審理で、和解案を受諾すると回答した。
   住民側も受け入れ、和解が成立した。
    原子力損害賠償紛争審査会の
中間指針に基づき、東電が策定した賠償基準を超える内容の和解
   成立
は初めてとみられる。今後の賠償手続きに影響しそうだ。


⇒ 「東電、避難者と家屋など賠償2312万円で和解」(2012年2月27日21時45分 読売新聞)
  (http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120227-OYT1T01004.htm)

    弁護団によると、和解の主な柱は、
    〈1〉約13年前に約2120万円で建てた家屋の損害が約1339万7000円
    〈2〉夫妻の昨年3月〜11月の慰謝料を各142万円に増額
    〈3〉不動産や家財、慰謝料などは追加請求を認める
    〈4〉支払い済みの仮払い補償金は和解金から控除しない
    ――などという。


⇒ 「東電、家屋賠償の増額認める 原発ADR、和解成立」(2012年2月28日13時10分)
  (http://www.asahi.com/national/update/0228/TKY201202270661.html)

    東電が警戒区域内の家屋の賠償に応じ、政府の
中間指針が定めた以上の慰謝料なども含めて
   計約2300万円余りを支払う内容。被害者側が明らかにした。

    
中間指針に基づいて東電が策定した基準には含まれていない不動産の賠償に応じたのは初めて。
   不動産の賠償や慰謝料の増額は多くの被害者に共通する課題で、今回の和解成立は他の被害者の
   賠償交渉にも影響しそうだ。



【東電の従前の姿勢】

⇒ 「東電、住宅賠償で初の和解 原発避難の住民に2300万円支払い」(2012/2/27 22:32)
  (http://www.nikkei.com/news/category/article/.....)

    賠償の内訳は、住宅の損害に加え、家財約470万円、避難費用や慰謝料、治療費など。
   慰謝料は事故から昨年11月末までの分で、
国の賠償指針に1人50万円が上乗せされ
   計約280万円。
今後、損害額が増えた場合は差額も請求できる

    佐藤さん夫婦は昨年9月に手続きを申し立て、センターは12月に和解案を提示していた。
   東電は1月下旬に送付した回答書で和解案の大半に応じる姿勢を示した上で
     (1)和解案記載の損害額を超える債務が一切ないことを確認する
     (2)前払いはせず、支給済みの仮払い補償金計160万円を控除する
     (3)慰謝料は国の賠償指針より増やさない
   ――との条件を提示。
   佐藤さん夫婦が抗議し、センターからの説得も受け、東電は一転、これらの条件を撤回したという。


⇒ 「東電原発賠償:大熊町の夫婦と和解成立 紛争解決センター」(毎日新聞 2012年2月27日 21時33分)
  (http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120228k0000m040095000c.html)

    東電は和解案について、被災後半年から慰謝料が月5万円に半減する中間指針を超える
   慰謝料などを拒否していたが、この日の協議では一転して、そのまま受諾した。







 【参考】

 ⇒  東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会
 ⇒  原子力損害賠償紛争審査会HP (文部科学省)


                                                                (未完)



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【シリーズ】 「原発損害裁判で、本人訴訟は可能か?」

2011/12/16 「その7/債務超過でも、なぜ、東電は倒産しないのか?
2011/12/09 「その6/仮払金をもらっても、裁判は可能なのか?
2011/12/02 「その5/弁護士の見解、国の不作為責任
2011/11/25 「その4/免責規定、肯定説の真意とは?
2011/11/09 「その3/原子力損害賠償支援機構法?
2011/11/04 「その2/原賠法の免責規定は適用されるのか?
2011/10/24 「その1/東京電力を訴えればよい、と言われても・・・



【コンテンツ】
2011/10/18 「最高裁が是認!? スパム投稿の自由

【Blog】
2011/11/08 「追い出し被害対策巡り消費者団体訴訟 関西のNPO提訴 (朝日新聞)
2011/07/15 「中小企業の連帯保証人、経営にかかわる人に限定 (朝日新聞)
2011/07/03 「経営状況分析手数料の無料等の取扱いについて ((財)建設業情報管理センター)








≪コンテンツ(電子書籍)の紹介≫
『本人訴訟のタクティクス 訴えの提起編』
編著  本人訴訟の輪


要件事実とは、従前は、司法試験に合格した司法修習生を主たる対象として、民事訴訟の実務科目として為されていたものでした。ところが、法科大学院のスタートにより、その教育現場での科目として採用されるに至ったことから、いっきに、その存在が知られるようになりました。

学習書としては、『紛争類型別の要件事実』と、『問題研究要件事実ー―言い分方式による設例』(いずれも、司法研修所編・法曹会出版)がベーシックなものとなります。


しかし、そもそも、民事訴訟法のテキストも読んだことがなく、それどころか、民法の体系書を通読したことすらない素人にとっては、読んだところで効果的でない分野です。つまり、ある程度学習の進んだ方でないとその有用性が理解できない、そういう次元の書物だと思います。

他方、今回取り上げる岡口基一『要件事実マニュアル』は、『紛争類型別』などがテキストだとすれば、参考書に当たるよな書籍です。そして、こちらは要件事実そのものを理解すること以外にも活用できますので、素人にとってもその活用が検討されるわけです。

そこで、本書において、その素人なりの付き合い方について若干の考察をしてみました。


本書は、シリーズ「本人訴訟のタクティクス」から、訴えの提起編のコンテンツをセレクトしたものです。


収録タイトル
1  訴訟手続きを学習する  まずは、この100ページ!
2  どうしても知っておくべき基礎知識
3  「請求の特定」はプロでも難しい?
4  訴状の記載、簡略なものがプロらしい?
5  岡口・要件事実マニュアル 素人なりの付き合い方は?








 ● 訴訟のあれこれ編
   1 “まずは知ろう「裁判にかかる費用」”
   2 “弁護士に頼むべきか、自分でやるべきか”
   3 “見せかけの争点に騙されない”
   4 “「本人訴訟は不利である」、改めて、その覚悟を”
   5 “100人の弁護団?”
   6 “もう一度確認、本当に、訴えて割に合う?”
   7 “民事訴訟に関する法律や手続きを、学習する”
   8 “要件事実とは、何ですか? どう活用するの?”


   〆 民事訴訟一般の解説 (鳥取地裁・家裁HP)

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【訴状】の書き方などの解説。

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W ネットトラブル編
ネットにかかわる各種トラブルの各論。



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§お勧め資料§




● 『震災の法律相談Q&A (2版)』
  弁護士法人淀屋橋山上合同 編著
  (民事法研究会 2011年11月)

多くの項目をQ&A方式で扱っており、震災の法律関係について基本的にどのようになっているかを知るのに便利な一冊です。NHKの生活笑百科のような感覚で、実体関係について調べることができます。

ただ、あくまで専門書ですので、素人がそれだけを読んで自分で裁判までできるかと言えばそのようなものではありません。むしろ、弁護士に相談する前や、弁護士に本格的に相談したいと考えるような方が、基本的な法律知識を得る為に活用すべき一冊です。





● 『原発事故の訴訟実務
    風評損害訴訟の法理』
  升田 純
  (学陽書房 2011年12月)

色々な法律実務書をお書きになっている升田先生の御著書です。前半パートでは、必ずしも風評被害に限定せず、震災に関する法律問題を一般的に扱っておられます。後半パートでは、風評被害についての過去の裁判例などの紹介となっています。おそらく、風評被害の著作を、急遽、震災問題と結びつけられたのではないかと想像するような著作となっています。





● 『震災の法律相談』
  小倉秀夫ほか 著
  (学陽書房 2011年06月)

分かりやすい記述で、震災の法律問題を全般的に取り扱っています。ただ、それほど専門的な内容にまで踏み込んでいないような感じもします。どちらかといえば、さわりのみを扱っているという感じで、それが逆に、法律の素人には読みやすいかもしれません。


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